- 走行中、車からキュルキュルと変な音がする
- 走り出しやハンドル操作で音がする
- エンジンの掛け始めや雨の日に激しく音がする
この記事は、車からキュルキュルと異音がする原因、修理の料金などについて、元ディーラーの一級整備士が詳しく解説します。
この記事を書いた人:きりん
元ディーラーの一級整備士で整備士ねっと管理人です。自動車整備業界に長く携わり、現在は整備業界のコンサルなども行っています。twitterでたくさんの整備士さんや業界の人と繋がっているのでチェックしていただけるとうれしいです。(seibisi_net)
キュルキュル音3つの原因
- エンジンのベルトによる異音(ベルト鳴き)
- ウォーターポンプによる異音
- その他
症状別の原因は次のとおりです。
症状 | 原因 |
---|---|
・雨の日や冬に発生 ・走り出し/エンジンかけ始めに発生 ・アクセル踏んだ瞬間に発生 ・駐車場でハンドル切った時に発生 ・カーブを曲がるときに発生 ・A/C「ON」時に発生 ・激しく大きな音 | 1.ベルト鳴き |
・エンジンを掛けた瞬間に発生 ・エンジンを止めた瞬間に発生 ・「キーッ」「キッキッ」音 | 2.ウォーターポンプ |
・その他 | 3.その他 |
ベルト鳴き
エンジンのベルトの不具合によるキュルキュル音を、業界用語で「ベルト鳴き」と言います。以前からよくある不具合で、キュルキュルと異音がする場合の多くがベルト鳴きです。
1.エンジンのベルトによる異音(ベルト鳴き)

エンジンに装着されているゴムベルトに摩耗・劣化・損傷・張力(張り)不足があるとキュルキュルと異音がします。
車からキュルキュル異音がする場合の原因で、最も可能性が高いのが、このエンジンのベルト鳴きです。
私の整備士経験からも、お客様からこのような依頼があった場合の原因のほとんどが、エンジンのベルト鳴きです。
エンジンのベルトに原因がある場合、次のような症状になる特徴があります。
- 雨の日や冬に発生
- エンジンかけてすぐ、走り出してすぐに発生
- アクセルに連動して音が変化
- ハンドルを切ってカーブを曲がる時に発生
- エアコンONの時に発生
一つでも当てはまれば、エンジンのベルトに原因がある可能性が高いです。
エンジンのベルトとは

エンジンのベルトとは、発電機やエアコンのコンプレサー、パワーステアリングを作動させるために必要な、合成ゴムでできたリング状の部品で、ファンベルト、エアコンベルト、パワステベルトと呼ばれる部品です。
ベルトはエンジンの力を他の装置・部品に伝えるための部品で、自動車のエンジンには車種によって、0~3本程度装着されています。
ベルト鳴きの2つの原因と修理方法・整備料金
- ベルトの経年劣化(寿命)によるベルト鳴き
- ベルトの張力(張り)不足によるベルト鳴き
ベルト鳴きの原因は大きく分けて2つです。
2つの原因によって、修理方法や費用が変わりますが、これを判断するには整備士の技術や経験が必要です。
1.ベルトの経年劣化によるベルト鳴きの場合

- 整備内容:ベルトの交換(新品)
- 整備料金:5,000~50,000円程度
エンジンのベルトはゴム製品なので、長年の使用により、摩耗・劣化し、最終的には切れてしまう消耗品です。
ベルトが摩耗・劣化してくるとベルト鳴きが起きる場合があります。異音は、力がうまく伝えられずスリップしている時に出る音です。
ベルトが劣化して異音がしている場合は、ベルトを交換することで異音が直りますので、整備工場に依頼して新品のベルトに交換しましょう。
整備料金は、車種や交換が必要なベルトの本数によって大きく変わります。大きな車や高級車ほど料金が高くなる傾向にあります。
整備経験のない人が、ベルトの交換をするのはかなりハードルが高いです。大変危険を伴う作業でもあるので、整備工場に任せましょう。
2.ベルトの張力(張り)不足によるベルト鳴きの場合
- 整備内容:ベルトの張力(張り)調整
- 整備料金:3,000~10,000円程度

ベルトの張力(張り)が低い場合にベルト鳴きが起きます。ベルトの張力(張り)とは、「ベルトがピンと張っているか、ダブついているか」です。張力が低くダブついている場合には、力がうまく伝えられずスリップしてしまいキュルキュル音が発生します。
ベルトの張力は、新車時には自動車メーカーが、使用過程中は整備工場が(車検時などに)点検・調整しています。
車検時などにも整備工場が張力を点検している理由は、合成ゴムであるベルトが、新品時から使用過程中に少しずつ伸びていくからです。
修理方法はベルトの張力調整です。整備工場で調整してもらってください。
整備料金は、車種や調整が必要なベルトの本数によって大きく変わります。大きな車や高級車ほど料金が高くなる傾向にあります。
近年の車は、ベルトの張力を自動調整しているため、張力は常に適正なので張力不足によるベルト異音は起きません。しかし、経年劣化による異音は従来と同じように起きますので、異音がしたらベルト交換が必要です。
整備ミスの可能性も

車検などでベルトを交換・整備した後に異音が発生した場合には、整備工場での張力の調整がうまくできなかった可能性があります。
実は、ベルト異音がする場合の原因で意外に多いのが、「整備工場の調整ミス(整備ミス)」による異音です。もし、調整ミス(整備ミス)による異音であれば、通常、整備保証で修理してもらえるので整備料金はかかりません。
車検などの整備後にキュルキュル音が発生した場合は、必ず整備した整備工場で診てもらうようにしましょう。
本来、ベルト交換時などの張力調整は、各自動車メーカーが作成したマニュアルに従い、張力計などの機械を使用して整備士が行います。
しかし、整備工場の中には張力計や整備マニュアルを確認せず、「カンや経験」でアバウトに張力調整をする整備工場があるため、そのような整備ミスが起こるケースがあります。
ちなみに、元整備士である私も、このような調整不良の整備ミスを何度も経験していますが、現在では張力計を使ってしっかり張力調整をする整備工場が増えています。
関連記事>>>車の保証と保証継承とは?知らないと損
整備経験のない人が、ベルトの調整をするのはかなりハードルが高いです。大変危険を伴う作業でもあるので、整備工場に任せましょう。
スズキの車はベルト鳴きしやすい!?

私の経験上の話ですが、歴代のワゴンRやアルトなど、特にスズキの軽自動車にベルト鳴きの症状が多く出ます。(周りの整備士にも、同じことを言う人がたくさんいます)
私の知る範囲でも、スズキでは過去にベルトの不具合によるサービス・キャンペーンなどが多く出されていて、近年搭載されているR06Aというエンジンにおいても、メーカーが無償でベルトの新品交換などを実施しています。
もちろん、ベルト鳴きはどのメーカーのエンジンにも起こり得ますが、もし、キュルキュル音がしている車がスズキの軽自動車であれば、ベルトに原因がある可能性が高いと思っていいかもしれません。
ベルト鳴きを放置するとどうなるか

安全上深刻な被害が出る可能性があります。また、部品が壊れるなどして修理費用が余計にかかる可能性が大です。
上述したとおり、エンジンのベルトは発電機やエアコンのコンプレサー、パワーステアリングを動かすために必要なものです。
ベルトに不具合を抱えたまま、そのまま走行を続ければ、いずれベルトが完全に切れてしまうなどしてしまい、それぞれの装置が機能しなくなます。
ベルトが切れてしまった場合の不具合の例
- エンジンが始動しない
- エンストする
- バッテリーチャージランプが付き、バッテリーが上がる
- ハンドルが操作できない・重い
- エアコンが効かない
他にも、車種や状況によってはこれよりも安全上深刻な事態を引き起こす可能性があります。
また、2次的な部品の損傷により、整備料金が高くなる可能性が十分に考えられます。
ベルト鳴きの不具合が出た場合には、なるべく早く整備工場に修理依頼をしましょう。
2.ウォーターポンプの不具合による異音
エンジンのウォーターポンプに不具合がある場合、キュルキュルと異音がします
私の整備士経験からも、時々このような不具合で入庫する車両があります。
エンジンのウォーターポンプに原因がある場合、次のような症状になる特徴があります。
- エンジンを始動した瞬間やアイドリング時にだけ異音
- 「キーッ」「ヒーッ」「キュー」「キッキッキッ」に近い音
自動車整備士でも音だけで判断するのは難しい不具合で、時々上述のベルト鳴きと間違えます。
エンジンのウォーターポンプとは

エンジンのウォーターポンプとは、エンジン内部を冷却するクーラント(冷却水)を循環させるポンプで、エンジンと一緒に高速で回っている部品です。
エンジンのウォーターポンプが機能を停止した場合、エンジンの熱を逃がすことができなくなり、エンジンは数百度まで高温になり溶損します。この状態を”オーバーヒート”といいます。
ウォーターポンプ異音の原因と修理方法・整備料金
- 整備内容:ウォーターポンプ交換
- 整備料金:20,000〜100,000円程度
ウォーターポンプ異音の原因は、経年劣化(寿命)です。高速で回る部品なので壊れやすい部品と言えます。修理方法は新品交換のみです。
整備料金は、車種によって大きく変わります。大きな車や高級車ほど料金が高くなる傾向にあります。
国産車のウォーターポンプの保証期間は、5年または60,000 km。この範囲を超えていなければ保証で(無償で)直せる可能性があります。但し、その場合はディーラーでのみ対応します。詳しくはこちらの記事をご確認ください。
>>>車の保証と保証継承とは?知らないと損
整備経験のない人が、ウォーターポンプの交換をするのは不可能に近いです。特殊な工具等が必要な場合もありますので、まず不可能と思って整備工場に任せましょう。
ダイハツのウォーターポンプが壊れやすい!?
私の経験上、ダイハツのウォーターポンプがよくこの症状になります。
異音がしている車がダイハツ車であり、上述の症状と一致する場合は、ウォーターポンプが原因である可能性が高くなると考えても良いかもしれません。
ウォーターポンプ不良を放置するとどうなるか
最悪の場合、エンジンがオーバーヒートし、壊れます
エンジンが壊れた場合の修理費用は、数十万円になることが多いです。
早めに整備工場で診てもらいましょう。
3.その他
- マフラー取付部の異音
- オルタネーターの異音
- タイヤの異音
- その他
ベルトの異音やウォーターポンプの不具合意外にも、異音の原因はたくさんあります。
車は作られた年代、製造メーカー、走行距離等の違いで、搭載される装置も異なり、一台一台違う壊れ方をするからです。
異音がしたら、とりあえず整備工場に依頼し、原因を解明してもらいましょう。
マフラーのキュルキュル異音

ホンダや20年以上前のダイハツなどに時々診られるのが、マフラーとマニホールド(排気管)の接続箇所からのキュルキュル異音です。
ベルト鳴きの異音に症状が似ているので、整備士も時々間違えます。
但しこの場合は危険性はなく、整備費用も安価で修理することができます。
まとめ
- エンジンのベルトによる異音(ベルト鳴き)
- ウォーターポンプによる異音
- その他
車は作られた年代、製造メーカー、走行距離等の違いで、搭載される装置も異なり、一台一台違う壊れ方をします。
「キュルキュル音」と言っても、音や振動は人によって感じ方が様々であり、自動車の整備経験のない人がこの記事を鵜呑みにして、自分で判断してはいけません。
大事なことは、整備工場に依頼して異音の原因をプロの整備士に判断してもらうことです。
また、自動車整備は病気と同じようなところがあり、早期発見、早期修理によって、事故を未然に防ぎ、2次的被害を食い止めることがとても重要なことです。同時に修理にかかる費用を最小限に抑えることができます。
この記事を参考にし、整備工場に修理依頼をしてください。
以上、車からキュルキュル音がする原因と修理費用についてでした。