自動車整備士人材不足の事実

自動車整備士の人材確保の問題はますます深刻となっています。
数年前まで日本の小型自動車ディーラーは、二級自動車整備士の資格を持ったエンジニアの採用しかしていませんでした。
もちろん理由は資格を持たない若者を採用するよりも、二級整備士の資格をもっている者のほうが即戦力となりえるからです。
その頃は、二級整備士の資格が取れる大学や専門学校には、ディーラーに就職を希望する若者があふれ、若者たちはそれぞれが希望するメーカーディーラーに次々に面接に訪れました。
そしてその中から、ディーラーは欲しい人数だけ採用していた。
要するに、買い手市場でした。
一転、整備士を目指す若者が激減しました。
自動車整備士の大学や専門学校に入学する学生が減り、二級整備士の資格を持った人材をディーラーで採用するのが難しくなってきました。
「来ない」のではなく、「いない」とう現実。
無論、ディーラー以外の民間の整備工場に、二級整備士の資格を持った新人が来ることは、ますます減りました。
それが、ここ数年で起こった出来事です。
そして、それはほんとうに一瞬の出来事だったように思えます。
自動車整備士人材不足の原因

国土交通省は人材不足の原因を、「人口減少」「団塊の世代の引退」「若者の車離れ」「職業選択の多様化」などと分析しています。
もちろんそれらの理由もありますね。
しかし、一方で大きな話題になっているのが、「自動車整備士の待遇の悪さ」です。
2016年頃、SNS上で自分の給与明細を公開したディーラー整備士の給与が話題になり、一気に自動車整備士の待遇の悪さが露出することになりました。
話題記事>>>「7年目で手取り11万円のディーラー整備士」
もちろん、これが全てではありませんが、一般的に給与は高いと思われていたディーラーの整備士が薄給だったことや、さらに資格をもっていて7年目だという事実に、世間の注目は集まりました。
これら給与明細などの情報を公開する人の中には、会社名を公表して給与明細を公開する人も多く、整備業界の間でも物議を呼びました。
「自動車整備業界の待遇の悪さ」が整備士の人材不足に繋がっていることは明白です。
また、整備士の資格を持っているのにもかかわらず、待遇・条件の悪さなどから、結婚等を機に異業種に転職してしまう整備士も多く、整備士を目指す若者を増やすことはもちろんですが、「整備士に定着させる」ことも重要な課題となっています。
自動車整備士人材不足の対策

自動車整備士の人材不足は現時点ではもう止めることはできず、最も効果がある対策として、外国人材の受け入れが考えられています。
これは自動車整備士だけではなく、日本の様々な人材不足の産業分野に入り込んできます。
良いか悪いか、人材不足の問題は日本固有の問題であり、世界的な問題ではなく、アジアの国々の人は日本に永住権を求めて、次からつぎへとやって来るでしょう。
日本は受入れざるを得ない状況になったということです。
もうすでに人材不足の問題は、整備士の待遇改善や女性整備士の活用など、小手先の対策ではもうどうしようもないところに来ています。
客観的に見ても、外国人材の受入れしか方法がないように思います。
それが、世の中に、整備業界にどのような影響を及ぼすかは、まだ私にはわかりません。
決して良い影響だけではないだろうとも思います。
自動車整備業界を変えろ
先日、自動車整備業界でこれから起業しようとする、A氏と話す機会を得ました。
整備工場を一つ立ち上げる訳ではなく、新たな価値を生むベンチャーです。
A氏は「自動車整備業界はユーザーサービスが向上していない。無能の集まりか?」と、一刀両断です。
- 車検のときは整備工場に持ち込み、現金でお金を払って帰ってくる。
- 事故のときはJAFに電話して、来るのを待つ。
- 新車を買う時は、ディーラーに家族でいって決める。
これら、自動車に関する行動パターンは、昭和から平成まで何も変わっていない。
A氏はこれを指摘しているのですね。
話を人材不足に戻します。
日本には9万件以上の自動車整備工場があり、30万人以上の整備要員がいます。
自動車整備業界は、コンビニ産業を超える所帯の大きな業界です。
例えば、9万件の整備工場が吸収・合併を繰り返し、半分の5万件になったらどうだろうか。
例えば、30万人の整備要員が横のつながりを持ってサービスを始めたらどうだろうか。
この大きな業界が、制度を大胆に変え、新しい日本の自動車整備業界を作ろうと考え、工夫すれば、人材不足の問題など無くなるのかもしれない。
そして、さらにもっとユーザーサービスが良くなるかもしれない。
私は、整備士の人材不足の問題が、業界を変えるチャンスなのではないかとも思っています。
業界はこれをきっかけに新しい価値を提案し、それが結果的に整備士の人材不足対策になることが理想なのではないだろうか。
最後に、国はそろそろ認証制度などの制度を改革するべきであることも、言っておきたいです。
そもそも国はこれまで、法定点検や認証制度などによって自動車社会の安全と地球環境を守っています。
それは否定しません。
しかし、自動運転の実現が目の前に来ている現在において、認証制度以外の方法で安全を担保できる方法は無いだろうか。
「国で指定された設備や工具が整った整備工場で、整備資格を持った整備士が、記録をつけながら作業する。」
現在行っているこのやり方以外に、安全を担保する方法はほんとうにないのだろうか、皆さんも考えて欲しいと思います。
コメント
初めまして、メカニックボードの代表
尾崎と申します。
以前にTwitterでコメントをいただきましてありがとうございました。
記事拝見しました。
自動車整備士の人材不足をなんとしてでも解消したい。
そんな思いでこの会社を立ち上げました。
記事を拝見してすごく共感できることが多かったのでついコメントしてしまいましたが、今後のことで新しいものを生み出すきっかけになればと思います。
突然のコメント失礼いたしました。
尾崎様、コメントありがとうございます。とてもはげみになります。
えらそうですが、私は尾崎様のような新しい力が業界には必要だと思っています。
陰ながら応援しています。
私に力になれることがあれば、何なりと言っていただければ嬉しいです。