エンジンの寿命が知りたい
車のエンジンは非常に高価な部品なので、故障や寿命は、新しい車を購入するきっかけになります。それだけに、エンジンの寿命はとても気になりますね。
この記事は、エンジンの寿命となる走行距離や、寿命前に故障する原因などについて、元ディーラーの一級整備士が解説します。
この記事は乗用の普通車、軽自動車のエンジンについて解説したもので、大型トラックやバスなどの貨物用の大型エンジン(ジーゼルエンジン)の解説ではありません。
自動車エンジンの寿命走行距離

適切なエンジンのメンテナンスを行っている場合、寿命は15万km以上
「エンジンの寿命」とは、適切にメンテナンスしながら使用した場合に、エンジン内部の重要な構造物がどこまで耐えうるように設計されているか
という意味であると私は考えます。
そして、自動車メーカー(エンジンの製作者)は少なめに見ても、15万km程度の走行にも耐えうる設計をしているのではないかと思います。
実際には、30万km以上壊れない可能性も十分にあり、タクシーや企業の営業車両などでは数多く存在します。
寿命まで壊さず乗れるか
寿命と寿命が来るまで壊さずに乗り続けられるかは別問題です。
人間も寿命は80歳以上ですが、病気をすれば、寿命まで生きられないことがあるのと同じです。
詳しくは後述します。
軽自動車エンジンの寿命

軽自動車も基本的には同じで、寿命は15万km以上
軽自動車のエンジンの寿命も、普通車と同じく15万km以上あると考えていいです。
軽自動車は安いのでエンジンも安く、寿命も短いと思われがちですが、決して安い部材で作られているわけではありません。
軽自動車のエンジンは、全体が小さいことや、たくさんの車に同じエンジンを搭載するため、普通車よりもコストを押さえることができています。
軽自動車は普通車よりも常用回転数が高く、その意味では普通車よりも過酷な使用条件になるので、それに耐えうるように普通車とはまた違う設計がされています。
決して普通車より劣ってるわけでも無ければ、弱いわけでも無く、軽自動車の性能にマッチしたエンジンが搭載されていると考えたほうがよいですね。
寿命が15万km以上だと思う2つの理由
- エンジンの保証期間は「10万km」
- 私の整備士としての経験
1.エンジンの保証期間は「10万km」
国産の各自動車メーカーは、エンジン内部の重要な部品に対して、最大で「5年又は10万km」の保証しています。
適切なメンテナンスをしていて、この範囲でエンジンが故障した場合には、保証で(無償で)修理するという意味です。
逆に言えば、「10万kmまでは壊れないように設計している・自信がある」とも言えますので、寿命は10万kmを超えると考えていいでしょう。
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2.整備士としての経験
現実、多くの場合で15万km以上走行している
私は、自動車を販売するディーラーで長年整備士をしていましたが、実際にエンジンの交換や修理を一度もせずに、15万km以上走行している自動車はかなり多く、大多数です。
また、エンジンの交換や分解・整備を日常的に行っていた経験から、走行距離などが与えるエンジン内部へのダメージを実際に手に取り、見てきた経験から、かなりアバウトな指標として、「15万kmあたりが一つの目安になるのではないか」と考えています。
寿命という指標の難しさ
実際には、エンジンの寿命(耐久性)は走行距離(どのくらい走行したか)ではなく、回転数(どのくらい回ったか)で考えます。
信号待ちなどのアイドリングでもエンジンが回っていることや、普段使用する回転領域(全開走行の多さ・少なさ)など、寿命を考えるうえで、考慮しなければならない要素が多すぎるので、寿命は「何km」「何年」という表現はエンジンの開発者でも難しいと思います。
普段は市街地の通勤に使用し、適切なメンテナンスをしていて、15万kmくらいでエンジン内部の重要な部品が壊れたとしても、不思議はない。
私はこのように考えています。
寿命が来る前のエンジン故障

寿命が来る前に、エンジンが故障する3つのパターン
- 適切なメンテナンスの未実施
- 設計不良・不良品
- 想定外の使用
記事中の「エンジンが壊れる」という表現は、エンジンの大部分を交換・修理しなければならないような、故障のこととしてください。
適切なメンテナンスの未実施
適切なメンテナンスをしなければ、寿命の前に壊れます
適切なメンテナンスとは、定期的な点検と定期交換部品の交換です。
定期的な点検の例
- 12ヶ月点検
- 車検時の点検
定期交換部品の例
- エンジンオイル
- エンジンオイル・フィルター
- クーラント(冷却水)
- タイミングベルト
- ファンベルト
詳しくは、メンテナンスノートを確認するか、販売店に問い合わせましょう。
これらのメンテナンスを実施せずにエンジンが故障した場合には、5年10万kmの保証期間の範囲にあっても保証されなくなる可能性が高いので、注意してください。
エンジンオイルの交換をしなければ、エンジンが壊れるのは当たり前なので、保証されなくて当たり前ですよね。
最も重要なメンテナンスはエンジンオイルの交換

エンジン・オイルに起因するエンジン故障がかなり多い
なんといっても、エンジンオイルが原因でエンジンを壊してしまうユーザーが圧倒的に多いです。
「エンジンオイルさえまめに交換していれば、壊れなかったのに」という故障を、整備士であれば誰もが何度も経験しています。
エンジンの故障は、特にエンジンオイルの交換頻度が大きく影響します。
エンジンオイルさえまめに交換すれば、エンジンは寿命まで乗れる可能性が大きく上がります。
設計不良・不良品
設計不良によるエンジン故障も意外に多い
適切なメンテナンスを実施していたのにエンジンが故障する場合は、そもそもの設計不良か、エンジンの生産工程でまれに出てしまう不良品を掴んだ場合です。
実際には不良品よりも、そもそもの設計不良の場合のほうが圧倒的に多いです。
残念ながら、どの自動車メーカーでもこのような設計自体に問題のあるエンジンを生産・搭載してしまう場合があります。
このような場合は、メーカーの保証制度、リコール制度などによって救済されることが多いですが、保証期間である10万kmを超えたあたりで故障が起きてしまうケースもあり、その場合は、自らが修理費用を負担しなければなりません。
特に、新開発のエンジンを搭載した車両にこのような設計不良が見つかるケースが多く「新開発のエンジンが搭載された車はしばらく買わない」という人が整備士に多いです。私もその一人です。
私個人の意見ですが、近年のマツダのSKYACTIVE-D(ディーゼル)や、しばらく前のトヨタのD4(1AZ)エンジンは設計不良かなと思っています。いずれも新開発ですすやスラッジが大量発生・蓄積によるエンジン不調です。どんなに優秀な整備士でも、設計不良の場合は基本的に修理不能ですから。
想定外の使用
自動車メーカーが想定していないようなエンジンの使い方をした場合、壊れます
レース走行などがこれに当たりますが、普通はあまり考える必要がないですね。
エンジンの寿命は車の寿命ではない

エンジンは交換できます
エンジンは、新品、中古品、リビルト品などで交換対応できるので、エンジンの寿命は車の寿命ではありません。
エンジンは高価な部品なので、エンジンが故障したのをきっかけに、車を新しく交換する人が多いですが、ヨーロッパなどでは、エンジンを交換してまた乗る人が多いと言われます。
いずれにせよ、エンジンは交換できるので、そういう選択肢は始めから捨てないほうがいいですね。
エンジンが壊れた場合、日本の多くの車屋さんでは新しい車をすすめると思いますので。
まとめ
- エンジンの寿命は15万km以上
- メンテナンス次第では、30万km以上も十分可能
- 但し、寿命まで壊さずに使えるかは別
- 壊れる原因はエンジンオイルの交換頻度
以上、自動車エンジンの寿命についてでした。