今では当たり前になった、アイドリングストップ機能付きの自動車。アイドリングストップ車の12Vバッテリーは、いろんな事が言われています。
- バッテリーが上がりやすい!?
- 気をつけて乗らなければならない!?
- 専用バッテリーが使用されている!?
- 充電方法が違う!?
この記事では、アイドリングストップ付き車の12Vバッテリーの疑問や充電等の整備方法について、元ディーラーの一級整備士が解説します。
この記事を読めば、アイドリングストップ車のバッテリーについて理解できます。
この記事を書いた人:きりん
元ディーラーの一級整備士で整備士ねっと管理人です。自動車整備業界に長く携わり、現在は整備業界のコンサルなども行っています。twitterでたくさんの整備士さんや業界の人と繋がっているのでチェックしていただけるとうれしいです。(seibisi_net)
バッテリーが上がりやすい!?

実はそうとは限りません
少し歯切れが悪いですが、詳しく説明します。
アイドリングストップ車のバッテリーについては、以下のことが世間でよく言われています。
- バッテリーが上がりやすい
- バッテリーの劣化が激しい
- バッテリーの寿命が短い
インターネットで検索しても、このように書いてあるサイトを良く見かけます。でも、正しくありません。
アイドリングストップ車のバッテリーは、通常の車のバッテリーよりも負担が大きい
これが正しいです。
負担が大きいということは、結局バッテリーの「寿命が短い、上がりやすい」となるように思いますが、必ずしもそうとは限りません。
なぜなら、各自動車メーカーはその問題に対する様々な対策を施しているからです。
- 高性能バッテリーの搭載
- 高精度な充電量制御
- 劣化したらアイドリングストップを停止する機能
上記が主な対策です。
アイドリングストップ車のバッテリーにかかる負担が大きいことは、自動車メーカーは、当然知り尽くしています。その上で自動車を開発・設計しているので、上記のように多くの対策をしています。
そのため、必ずしもバッテリーが上がりやすいとは言えず、実際に、メーカーや車種によって大きく違います。
そして、メーカーや車によってバッテリーの劣化状態が違うことは、特にアイドリングストップ車に限ったことではありません。
アイドリングストップ車のバッテリー上がりや、早期劣化に対するメーカーの対策については、当記事下部でさらに説明していますので、整備士さんや興味のある人は読んでみてください。
アイドリングストップ車のバッテリー負担が大きい理由
自動車はエンジンを始動するとき(クランキング時)に最もバッテリーの電気を多く使う
アイドリングストップ車は信号待ちでエンジンが停止します。エンジンを止めるということは、動き出す時にまたエンジンを始動しなければなりません。
多くのエンジン始動を行うアイドリングストップ車は、バッテリーへの負担が、そうでない車に比べ何倍も大きくなります。
アイドリングストップ車は気をつけて乗らなきゃいけない!?

アイドリングストップ車は、バッテリーへの負担が大きい車ですが、乗っている人が気をつけることは何もありません
インターネット上では「アイドリングストップ車はバッテリーに気を使え」などといろいろ書かれているようですが、何も気をつける必要はありません。
ドライバーがいろいろと気を使いながら乗らなければならない車なんて商品性が悪いとしか言いようが無いと個人的には思います。
自動車メーカーは様々な使用環境を想定して、自動車を作っています。私たちが思う以上に、激しい使われ方をした場合も想定しています。
何も心配ありません。普通に乗ってください。
ただし、運転状況や維持管理の方法によっては、バッテリーの寿命に影響が出ることはあります。しかしこれは、アイドリングストップ車でなくても、全く同じことです。
専用バッテリーが使用されている!?
はい、アイドリングストップ専用(IS用)バッテリーが搭載されています。
専用バッテリーとは、通常のバッテリーよりも高性能なバッテリーです。
アイドリングストップ車には、普通の自動車のバッテリーよりも高性能なバッテリーを搭載することで、バッテリー上がりや早期劣化を防いでいます。
交換する際には、必ずアイドリングストップ車専用のバッテリーを搭載してください。
専用バッテリーと価格
普通のバッテリーより少し高い
アイドリングストップ専用バッテリーの価格は、同サイズの場合、一般的なバッテリーの1.2倍から2.0倍くらいの価格です。
需要が増えてきたため、最近は値段が下がってきているようです。軽自動車の場合、6000円~1.5万円ほどとなっています。
普通のバッテリーとの見分け方は「型式」です。
普通のバッテリーが「40B、60B」などと数字から始まるのに対し、アイドリングストップ専用バッテリーは、「M、Q、S」などのアルファベットから型式が始まります。
参考:ダイハツのIS専用バッテリーM42
関連記事>>>M42バッテリーのおすすめはたった一つです/ダイハツ・スズキなどに適合
アイドリングストップ車に普通のバッテリーは使えるのか

- 物理的には搭載可能
- 早期劣化の可能性大
- バッテリーが上がりやすくなる
- 車が壊れたりはしない
- チェックランプが点灯する可能性有り
アイドリングストップ車に普通のバッテリーを搭載すると、度重なる始動(クランキング)による負荷に耐えきれず、すぐ上がってしまう等の不具合が起き理可能性が高いです。
ただし、取り付けたからと言ってすぐに壊れるようなこともありません。整備工場や販売業者では一時的に搭載することもあります。
しかし、現在は、普通のバッテリーと価格がそんなに変わらないので、専用以外を取り付けるメリットもなくなりました。
一時的な応急対応時以外では、確実にIS専用バッテリーを使用するようにしましょう。
充電方法・充電器が違う!?
普通のバッテリーと同じ方法・充電器で充電可能
アイドリングストップ専用となっているバッテリーですが、構造は普通のバッテリーと同じで、単に性能の高いバッテリーです。
充電方法も、充電器にも違いはありませんので、通常通り充電してください。
通常通りというのは、蓋が開けられるものは開けて、普通充電(急速充電も可能)を、蓋が開けられないものは普通充電(急速充電不可)という意味です。
おすすめのパルス充電器
現在の自動車用バッテリー充電器はやっぱりパルス充電器がおすすめ。繋ぎっぱなしOKで、効率的かつ安全に充電できます。
私はこのメーカーを使っていますが、かなりおすすめできます。※2023.6月現在、在庫少ない
まとめ
アイドリングストップ車のバッテリーについては、いろんな事を言う人がいて、ユーザーさんも整備士さんも迷うことがあると思います。この記事をぜひ参考にしてください。
以上、アイドリングストップ専用バッテリーについての説明記事でした。
このあと、自動車メーカーのアイドリングストップ車のバッテリーに対する対策の詳細が続きます。興味がある人は御覧ください。
バッテリー上がり・早期劣化に対する対策
バッテリーの負担が大きいアイドリングストップ車には、自動車メーカーがいろんな対策をしています。
代表的な3つを紹介します。
- 高性能バッテリーの搭載
- 高精度な充電量制御
- 劣化したらアイドリングストップを自動でやめる機能
1.高性能バッテリーの搭載
アイドリング・ストップ車には専用バッテリーが搭載されている
アイドリングストップ車に通常性能のバッテリーを搭載すると、度重なる始動(クランキング)に耐えきれず、すぐ上がってしまう等の不具合が起きます。

これはアイドリングストップ車用(IS用)バッテリーです。でも、実は特殊なバッテリーではなく、構造などは普通のバッテリーとなんら変わりありません。
単純に性能が高いバッテリーです。
しかし、一般の人にわかりやすくするため、IS用バッテリーという規格を作り、アイドリングストップ車に性能の低いバッテリーを搭載されるのを防いでいるのだと思います。

2.充電量制御
現在の自動車は「あんまりお腹いっぱいにならないように」「あんまりお腹が空かないように」ある一定の充電量を保つようにシステムが作られています。(充電量制御)
「スマホを常に充電していると、電池が劣化する」と聞いたことがある人も多いと思いますが、自動車のバッテリーも全く同じです。
自動車のバッテリーも、充電しすぎ(過充電)、充電量不足(過放電)を繰り返すと、バッテリーの性能が劣化します。
これを充電量制御といい、アイドリングストップ車でなくとも、現在の自動車はこのような制御がされています。
アイドリングストップ車は、この、緻密な充電制御でバッテリーの早期劣化を防いでいます。(燃費も向上します)
3.劣化したらアイドリングストップをやめる機能
常にバッテリーの状態を監視し、弱ってきたらアイドリングストップ機能を停止する
現在の車は、バッテリーの状態を常に監視しているため、このような事が可能です。「2.」で書いた充電量制御システムも監視しているからこそ可能なことです。
この機能を具体的に説明すると、バッテリーから出て行った電気の量、バッテリーに充電された電気の量、今現在のバッテリの電圧、指導時(クランキング時)のバッテリーの電圧、それらを常にコンピュータが監視し、バッテリーが弱ってきたらアイドリングストップすることをやめます。
アイドリングストップをやめることで、それ以上バッテリーが劣化することを防ぎ、さらにメーター内のチェックランプを点灯させ、ドライバーに修理(バッテリー交換)をうながします。
このように、自動車メーカーはいろんな対策していますが、もちろんこれだけではありません。
自動車メーカーはもっともっと細かいところまで工夫を重ね、アイドリングストップ車の弱点である「バッテリーの早期劣化」に対する対策を施しています。
「バッテリー充電中のためアイドリングストップできません」の表示
これは、車のコンピュータがバッテリーの劣化を恐れて、アイドリングストップをやめている状態です。
ノアやボクシーなど、トヨタの車種でメーター内のインフォメーションディスプレイに「バッテリー充電中のためアイドリングストップできません」と表示されることがあります。
この表示が出ても、ドライバーは特に何もしなくて良いですが、あまり長く続くようでしたら、車やバッテリーの点検をしてください。
おまけ:アイドリング・ストップ機能を停止する二つの方法
- 「OFFスイッチ」を押す方法
- デフロスタを「ON」にする方法
機能を停止したい場合は「OFF」スイッチを押してください。オフスイッチを押せば機能を停止します。

- 「そもそもアイドリングストップなんてしなくていい」
- 「とても運転しにくいし、わずらわしい」
などと思う人も実際多いですので、そのような場合はこのスイッチで解除してください。「アイドリングストップなんていらない」という人は、ぜひ機能を停止してください。私は常にOFFにしています。
但し、一度エンジンを切ってしまえば、スイッチはまた元に戻ってアイドリングストップする設定に戻ります。
このようなスイッチを私は「イッテコイスイッチ」などと呼んでいますが、アイドリングストップ機能がいらない人は、毎回毎回このスイッチを押さなければならないので、わずらわしく感じる人も多いと思います。ですが、これは仕方のないことです。不便かもしれませんが、これは法令上も決められています。
アイドリングストップ車はアイドリングストップするものとして、燃費性能や環境性能が登録されています。常にその機能を停止してしまうことは、車を登録した時の状態と違う形で使用することとなります。自動車メーカーはわざと常にOFFできないようにしています。
また、エアコンのフロントガラスから風を出す(デフロスタ)機能を使うことで、アイドリングストップを禁止します。これはあまり知られていません。
ただし、デフロスタを常に作動していると、燃費が悪くなります。
以上、アイドリングストップ車のバッテリーについて整備士の解説でした。