ディーラーなどで新車を購入すると、将来の整備をセットにした点検パック商品を、必ずと言っていいほど勧められます。「メンテナンスパック・点検パック」と呼ばれるサービスです。
実際にメンテナンスパックに加入する人も多いですが、金額も安くないため「本当に必要なのか、得なのか」について疑問に持つ人も多いと思います。
この記事では、新車購入時のメンテナンスパックは必要かについて、元ディーラー整備士が本音で解説します。
メンテナンスパックはいる?いらない?入会を決める前に、読む価値あります。
- メンテナンスパックに入るべきか
- 点検パックのメリット・デメリット
- ホンダやスズキのメンテナンスパックの例
メンテナンスパックに入るべきか
- 車検整備の料金が含まれている点検パックなら入会を検討すべき
- 車検整備の料金が含まれていない点検パックはおすすめしない
車検整備付き点検パックなら、得する場合が多いです。車と一緒にローンを組めば支払いも楽です。
車検整備がついていない30ヶ月のメンテナンスパックは、メリットが少ないので慎重に考えてください。あまりお得じゃ無いことが多いです。
車検付きのメンテナンスパックをおすすめする理由
メンテナンスパックユーザーが、加入していて一番良かったと思うときは、車検のときです。
車検付きのメンテナンスパックに加入していれば、3年後の車検時に、税金などの経費だけで車検が済んでしまうので、とっても特した気分になるはずです。
それに対し、車検整備がついていないメンテナンスパックは、車検時には通常通りの車検整備料金がかかります。
同じメンテナンスパックでも、車検付きと、車検がつかないサービスでは大きな違いがありますので、ここが最も重要なポイントになります。
車検整備付きの36ヶ月の点検パックは入会する価値が高いです。ぜひ検討してみてください。
ただし、トヨタやホンダ、日産など、ディーラーによってパックされた内容や料金が全く違いますので、しっかり確認してから決めて下さい。
メンテナンスパック・点検パック詳細説明
メンテナンスパック・点検パックとは、一定期間の将来の整備をセットにして安く販売するものです。最近ではディーラー以外の民間の整備工場でも販売されている場合があります。
例えば、新車購入時から30ヶ月の点検パックに加入すれば、その期間中にある複数の定期点検などがセットになっています。定期点検をそれぞれ毎年実施するよりも、トータルで安く済むといったものです。
但し前金(新車購入時に支払い)が前提です。
セットの内容については、整備工場によって違いがあり、定期点検の他にワイパーゴムやエンジンオイルの交換がセットされているものもあります。
さらに積雪地では、夏タイヤから冬タイヤへの入れ替えなどがセットされているなど、地域によっても違いがあります。
メンテナンスパックの例
- 1年後の12ヶ月点検
- 1年半後の6ヶ月点検
- 2年後の12ヶ月点検
- 2年半後の6ヶ月点検
- 3年後の車検整備
- ワイパーゴム3回交換
これらが全て含まれて7万円などのサービスがあります。
スズキ安心メンテナンスパックの例(基本A)
- 1年後の12ヶ月点検
- 1年半後の6ヶ月点検
- 2年後の12ヶ月点検
- 2年半後の6ヶ月点検
- 3年後の車検整備
- オイル交換7回
- オイルフィルター交換3回
この内容で軽自動車70,000円前後、1,800cc以下の乗用車82,000円前後です。
メンテナンスパックの種類
メンテナンスパックの内容については、整備工場によって大きく違います。
期間による違い
メンテナンスパックの種類で、最も大きな違いは期間の違いです。
新車購入時における、ほとんどのメンテナンスパックは30ヶ月、又は36ヶ月となっています。
ここ重要
30ヶ月、36ヶ月のパックの違いは、初回車検の整備料金を含むか、含まないか
メンテナンスパックの内容に、車検代を含むか含まないかは、最も重要な要素です。36ヶ月のパックに入れば、3年後の車検時にそれほどお金がかからないで済みます。
※料金に含まれるのは整備料金のみで、税金などの諸経費は別途必要になります。
車検代を含まない30ヶ月の場合は、車検の料金はいつものとおりに掛かかります。
30ヶ月のパックと36ヶ月のパックでは料金や内容が大きく違いますので、確実に確認してください。また、36ヶ月の車検整備付きについては、商品設定がない整備工場も多いです。
ホンダのメンテナンスパック「まかせチャオ」の場合
コース | 内容 |
---|---|
5S,4S,3S,2S,1S | 車検整備付き |
5T,4T,3T,2T | 車検整備無し |
ホンダのメンテナンスパック「まかせチャオ」の場合は、「S」タイプが車検付きで、「T」タイプが車検無しのメンテナンスパックです。
内容による違い
トヨタやホンダなど、ディーラーのメンテナンスパックの内容については、ほとんど同じで、基本的には、6ヶ月ごとに定期点検を実施していきます。点検ごとにオイル交換やワイパーゴムの交換がセットされていることが多いです。
エンジンオイルの交換費用については、点検パックに含んでいるディーラーと含まないディーラーがあります。
オイル交換は比較的費用が掛かるため、パックの内容に含まれるか含まれないか、必ず確認しましょう。
また、1年ごとのタイヤ交換が含まれていることもあります。タイヤを夏タイヤから冬タイヤに交換する積雪地のユーザーにとってはこれも大きな要素なので、必ず確認しましょう。
ポイント
- オイル交換がセットされているか
- タイヤ交換がセットされているか
- ワイパーゴム交換がセットされているか
メンテナンスパック加入6つのメリット
- 期間中は車にお金がかからない
- 安心して車に乗れる
- 車がきれいに保てる
- スケジュール管理が容易になる
- 車の能力を保てる
- 再販価値を上げることができる
1.期間中は車にお金がかからない
メンテナンスパックは前金制なので、最初に支払ってしまえば、その都度お金がかかりません。
オイル交換や定期点検など、車のメンテナンスにはお金がかかるものです。
特に、36ヶ月の車検整備付きのパックを選べば、3年後の車検の時に大きなお金を用意する必要がありません。保険好きの日本人にとっては、これは大きな魅力となります。
また、新車の購入時にローンを組む人にとっては、この3年後の車検代まで一緒にローンを組めるので、300万のローンでもパック代を入れた305万のローンでも、さしたる違いはないと感じるはずです。
「これさえ入っていれば、しばらくお金がかからないな」
そう感じてメンテナンスパックに加入する人が最も多いのではないかと思います。
2.安心して車に乗れる
メンテナンスパックに含まれた半年ごとの点検を受けていれば、故障などのトラブルのリスクを抑えることができます。
「新車なんだから、しばらくは故障なんかしない」と、思う人も多いと思いますが、点検などのメンテナンスをおこたれば、いかに新車と言えど車は壊れる可能性があります。
メンテナンスパックに加入していなくとも、点検を受けることはもちろん可能ですが、整備工場から必ず連絡が来るので忘れずに実施できます。また、整備料金を先に支払っているため、お金が無い時でも必ず実施できます。
特に、車についてあまり知識の無い女性は「絶対に車のトラブルにあいたくない」と思っているはずです。そんな女性にとってメンテナンスパックは特に必要かもしれません。実際に、私がディーラーで働いていた頃の経験では、独身女性がメンテナンスパックに加入するケースが非常に多かったと思います。
3.クルマがきれいに保てる
メンテナンスパックでは、6ヶ月ごとに点検などを行うため、そのたびに洗車や室内の掃除サービスがあります。
クルマの洗車や掃除をしたくないと思う人も多くいます。
「クルマの点検は良くわからないけど、6ヶ月ごとにきれいにしてくれて嬉しい」
筆者は、実際に、こんなことを女性ユーザーから言われた経験がたびたびあります。
クルマの美観を保つためにも、メンテナンスパックは有効な手段であると言えると思います。
ただし、半年ごとの点検はメンテナンスパックに含まれているが、洗車や掃除は別料金という整備工場があります。
掃除や洗車が料金に含まれるかどうかを必ず確認してください。
トヨタやダイハツなどのディーラーでは、ほぼ間違いなく含まれていると思いますが、会社によって違いがありますので、確認したほうが良いかもしれません。
半年ごとの点検の時には、洗車や掃除をしてくれますか?
加入する場合には必ず確認するようにしましょう。
4.スケジュール管理が容易になる
適正なタイミングでディーラーから連絡がきます
車の点検や車検の時期について、忘れてしまい、期限を過ぎてしまう人もいます。
また、あまり車に興味がない人は、車の点検時期やオイル交換時期などにも興味がわかず、おろそかにしがちになります。
車の管理をある程度任せられるメンテンナンスパックは、そのような人に最適なサービと言えます。
5.車の能力を保てる
新車時の燃費や走行能力を確実に維持することができます
車は、新車から時間が経つに連れて能力が劣化していきます。
特に燃費が悪くなっていくことに関しては、なるべく避けたいものです。
ディーラーのメンテナンスパックでは、確実な整備やリコールなどの実施で、車の能力の劣化を最小限にすることができます。
6.再販価値を上げることができる
整備の行き届いた車は高く売れる
中古車の査定の要素の中に、「エンジンや車両の状態」があります。適正にメンテナンスされた車と、そうではない車の査定額は大きく変わります。
メンテナンスパックは再販時の車の価値を上げることができます。
メンテナンスパック加入4つのデメリット
- 初期費用がかかる
- 不必要なサービスが含まれる可能性
- ディーラーに依存
- 解約できない
1.初期費用がかかる
加入時に8~20万円程度の費用がかかります
メンテナンスパックはどこでも前払い制なので、初期費用がかかります。
新車購入時などで資金に限りがある状態ではデメリットになります。
逆に、自動車ローンなどで購入する場合は、ローンの中にメンテナンスパック料金を含む事ができるのが一般的なので、その場合は初期費用がかかることはなく、将来の整備料金もローンすることになるので、便利と感じる人も多いです。
2.不必要なサービスが含まれる可能性
オイル交換、ワイパーゴム交換などの交換時期は人による(走行距離による)ため、人によっては、過剰な整備となりムダになる
特に年間の走行距離が短い人はデメリットになる場合があります。
メンテナンスパックのメニューは、人によらず、タイミングやメニュー内容は一律で決まっています。
筆者の経験では、まだ使えそうなワイパーゴムを交換したり、必要のないタイヤローテーションをしたり、メンテナンスパックが必要ないようなお客様もたくさん見受けられました。
3.ディーラーに依存
加入中、整備工場を選ぶ自由がなくなります
メンテナンパックを展開するディーラーの目的は、ここにあります。もっと言うと、次に購入する車や、家族の車の購入も見据えています。
人の気持は変わります。また、後述する「解約できない」ことも相まって、人によってはデメリットになる可能性があります。
4.解約できない
通常、メンテナンスパックは解約できません
メンテナンスパックは契約上、解約できないケースが多いです。
「解約することはない」と思う方もいると思いますが、次のようなケースが考えられます。
- 整備工場の態度や接客などが嫌になって、もう二度と入庫したくなくなった
- 車を売ってしまった。
これらのようなユーザー側の事情により解約したい場合は、返金されないことが多いので注意が必要です。
ちなみに私が働いていたディーラーでは次のような事情がある場合のみ、解約・返金に応じていました。
- 引っ越してしまい、物理的に入庫できなくなってしまった。
- 契約している人が運転できない状態になってしまった。
解約の条件に関しては、ディーラーや整備工場によって違いますので、契約内容をよく確認してください。
まとめ
36ヶ月の車検付きのメンテナンスパックなら、加入するとお得になるケースが多いので、加入を検討する価値は十分にあります。車検整備がついていないメンテナンスパックであれば、メリットが小さいためしっかりと検討してください。
ただし、車検整備が付いていないパックでも、女性の方や車に詳しくない方にとっては、安心を買うことができるので、大きな価値があります。
メンテナンスパックのメリット・デメリットをよく考えて、いるのか、いらないのかについてしっかり検討しましょう。
以上、メンテンスパックについての記事でした。参考になれば幸いです。
メンテナンスパックに入っても入らなくても、車の点検やオイル交換などの定期的なメンテナンスは必要です。