同じ内容の整備なのに、ディーラーや整備工場によって整備料金が違うのはなぜか
事実、自動車の車検などで、同じ整備内容なのに整備工場によって料金が違います。
例えば、A整備工場では1万円だった整備が、B整備工場では2万円になることがあります。
この記事では、同じ整備内容でも、なぜ整備料金が高い工場と安い工場があるのかについて、整備士ねっとチームが解説します。
実は、整備料金が工場によって違うこと自体はごく普通のことです。
工場によって整備料金が違う2つの理由
- 工賃(レバーレート)が違うから
- 部品代が違うから
整備料金は、どこの整備工場でも工賃と部品代で決まります。
整備料金=工賃+部品代
それではなぜ工賃と部品代が整備工場によって違うのでしょうか。
1.工賃が違う理由
レバーレートが違うから
工賃(技術料)は下記のように算出されます。
工賃(技術料)=作業点数(指数)× レバーレート
作業点数とは、「その作業に何時間かかるか」の指標であり、概ね決まっています。
レバーレートとは「1時間あたりの工賃」で、整備工場で代わります。
作業点数(指数)はどこでも同じ
作業点数(指数)とはその作業に要する時間で、整備業界で決まっています
例えばムーブのストップランプ球交換なら0.3時間、アクアのドアミラー交換なら0.5時間など、車種と作業によって大まかな作業時間の目安が決まっています。
ホンダ・フィットの作業点数(指数)例
表の右の列の数字が指数で、作業にかかる時間です。
どこの整備工場でも、このような作業点数(指数)表を調べながら見積書や請求書を作成しており、作業点数(指数)はもちろん全国共通です。
ただし、この作業点数は目安ですので、「錆びていてなかなか外れなかった」など、何らかの理由があれば、そこから追加換算されることがありますので、必ずこの指数通りとなるわけではありません。。
レバーレートは整備工場によって違う
レバーレートは1時間あたりの工賃で、整備工場によって違います。(整備工場側が自由に設定しています)
レバーレートが6500円の整備工場では、1時間作業した場合の工賃が6500円ということになります。
アクアのドラミラーを交換した場合の例(指数は0.5で計算)
レバーレートの違う工場 | 工賃 |
---|---|
レバーレート 7,000 円のA工場 | 0.5× 7,000=3,500円 |
レバーレート10,000 円のB工場 | 0.5×10,000=5,000円 |
このように、アクアのドアミラー交換という同じ作業であるのにも関わらず、整備工場AとBでは、工賃に大きな差がでます。
作業工賃は作業点数×レバーレートです。作業点数はどこでも同じですが、レバーレートは整備工場によって違います。
そのため、同じ整備をしても、工賃が整備工場によって違います。
レバーレートの相場
レバーレートは地域の物価や周りの整備工場の状況を踏まえて整備工場が決めます。
一般的に、レバーレートの傾向は次の通りです。
- 都市部→高い
- ディーラー→高い
- 外車専門工場→高い
この傾向からすると、東京の真ん中にある外車ディーラーのレバーレートが頂点で、最も高いことになりますが、概ね、間違っていないと思います。
「トヨタは高い」「ディーラーは高い」などとよく言われますが、実際にディーラーはレバーレートが高い傾向にあるので、事実、工賃は高いです。
言い方をかえると、ディーラーのレバーレートが基準で、民間の整備工場のレバーレートが安いとも言えます。
というのも、民間の整備工場では、ディーラーと同じ整備料金でやっていくのは容易ではありません。一般的に、民間整備工場ではディーラーより整備料金を安くしなければ、なかなかお客さんが来てくれないからです。
つまり、「ディーラー以外の整備工場が、ディーラーのレバーレートより安く設定している」と考えるのが正しいのかもしれません。
実際のレバーレート
- 地方:6,000~10,000円
- 都市部:8,000~12,000円
- 東京:8,000~14,000円
ディーラーを含む全ての整備工場で、このくらいですが、筆者の感覚であり、参考程度にしてください。
2.部品代が違う理由
車の部品は、大きく分けて2種類あり、整備工場がどちらを使うかによって値段が違います。
- 自動車メーカーが作って販売する部品(純正部品)
- 自動車メーカー以外の会社が作って販売する部品(社外品)
整備工場では、部品の交換を伴う作業をする場合、専門業者である部品屋さんや自動車メーカーなどから部品を仕入れます。
整備工場が上記1.2.のどちらの部品を選ぶかで、部品代が変わります。
- 純正部品:高い
- 社外品:安い
自動車部品のほとんどに定価があります。純正品と社外品の値段に違いはありますが、同じ部品であれば同じ値段ですので、同じ純正部品なのに整備工場によって値段が違うということは有り得ません。
ディーラーは全て純正部品を使う
ディーラーは全て純正部品を使用するので、部品代が高くなる傾向にあります。
純正部品を使う理由は、自分たちが信頼できる自社ブランドの部品を使い、部品にも整備にも保証を付けることで、お客様からの信頼を得られることができるため、純正部品を使います。
考えてみると、トヨタのディーラーで整備したのに、トヨタ以外の部品を使って修理するというのは、少し変ですね。
ディーラーでは、少し価格の高い純正部品を使用して修理するため、部品代が高くなります。
ディーラー以外は社外品を使う
ディーラー以外は社外品を多く使うので、部品代が安くなる傾向にあります。
社外品を使う理由は、純正品より部品利益が出ることと、ディーラーよりも安くお客さんにサービスを提供し、信頼を得られることができるからです。
ディーラー以外の民間の整備工場は、ディーラーより整備料金を高く設定することは難しいので、なんでも、なるべく安くできるように料金を設定しています。
純正品と社外品はどっちがいい?
自動車メーカーが作って販売する純正品に対して、社外品は安くて良くない部品と思われるかもしれませんが、実はそうでもないこともあります。
信頼性は社外品よりも純正品の方が高いですが、日本製の社外品にはそれほど粗悪なものは無いように思えます。
オイルフィルターやワイパーゴムなど、そもそも、それほど高い性能がいらない部品もあります。
例えば、部屋の電気がパナソニック製なので、必ずパナソニックの蛍光灯を取り付けるという人は、それほど多くは無いはずです。それと似ています。
ただし、社外品はよく売れるもの(よく壊れるもの)しかありませんので、社外品が無ければ純正品を仕入れるしかなくなります。一方、純正部品には、よほど古い車でない限り、無い部品はありません。
どの部品を使うかを、お客さんが決めることは可能か
- 民間整備工場は可能
- ディーラーは基本的に難しい
お客さんの車の部品はお客さんが決めます。これは大前提です。
民間の整備工場であれば基本的に可能です。
「純正品を使って」または「社外品を使って」と要望してください。多くの整備工場で受け入れてくれるはずです。但し、その事によって、完成(納期)が遅れてしまったりする場合があります。
ディーラーの場合は基本的に不可能です。
「純正部品が嫌であれば、なぜディーラーに?」と思われる可能性があります。
良い工場はお客さんに部品を選択させる
- 純正品
- 社外品
- リビルト品
- 中古品
自動車部品を使うときには、部品によって上記のような選択肢があり、価格が違い、それぞれメリット・デメリットがあります。
本来お客様の車のことはお客様が決めることです。価格とあわせて、それぞれのメリット・デメリットを説明して、お客様に選択肢をあたえる整備工場はとても良い工場です。
参考:見積もり提示義務
整備を実施する前に、見積書をお客様に提示しなければならない
自動車整備業界では上記のルールがあります。見積もり提示義務です。
見積もりの料金には上記の「指数」などが書いてある整備工場もあれば、詳しく書いていない整備工場もありあます。
納得できなければ、見積もり時に詳しく説明を求めてください。なぜその整備料金なのか明確に答えてくれるはずです。
整備料金についてのトラブル
整備料金についてのトラブルは、「見積りの提示や説明がなかった」ことを起因とすることが最も多いです。
もし、整備工場側から見積の提示が無かったのであれば、それは整備工場側に責任があります。
しかし、一般的には見積の提示が無かったからと言って、終了した整備作業の料金を支払わなくていいことにはならないことが多いため、自動車整備作業を依頼する場合は、概算料金の見積の提示を求める癖をつけることをおすすめします。
まとめ:整備料金が工場によって違う2つの理由
整備料金=工賃+部品代
- 工賃は工場によってレバーレート(時間単価)が違う
- 部品代は純正品か社外品かで違う
整備料金は、どこの整備工場でも工賃と部品代で決まります。整備工場に何らかの疑問を抱いて、この記事を読んでいる人もいるかもしれませんが、整備工場によって整備料金が違うことはあたりまえにあることです。
大事なことは、事前に詳しく説明し、多くの選択肢を与え、納得させてくれるような、自分に合った整備工場と付き合うことです。
以上、整備工場によって整備料金が違う理由でした。