現在の自動車整備士には、自動車の電気回路の点検をするのにサーキットテスターは必需品ですね。そして「自分のサーキットテスターが欲しい」と思うことは、プロの整備士であれば当然のことです。
しかし、サーキットテスターは性能や値段もピンからキリまで。どんなものを選べば良いのか迷います。
この記事では、サーキットテスターや故障診断が大好きな、元ディーラーの一級整備士がおすすめのサーキットテスターを紹介します。
- 1級整備士おすすめのサーキットテスター
- 整備士に必要なサーキットテスターの性能
サーキットテスターの種類を確認【大事】

サーキットテスターの種類
デジタルとアナログの違い
表示部が「液晶」か「針か」の違いです。
・デジタル→表示部が液晶
・アナログ→表示部が針
※本来、デジタルとアナログでは使い方から違いますが、ここでは説明しません。
通常サイズとポケットサイズの違い
単純に本体の大きさです。
・通常サイズ→手のひらからはみ出るくらい
・ポケットタイプ→ジャケットの内ポケットに入るくらい
それでは、この中で自動車整備士に必要なサーキットテスターを紹介します。
というより、私は全部あってもいいと思うので、おすすめ順に紹介します。
おすすめ順(購入する順番)
1台目は「デジタル」の「通常サイズ」がいい

自動車整備士が使用するテスターで、満足な性能を得られるのはデジタルの通常サイズです。
様々な故障診断において、幅広く対応するテスターで、最初の1台目に選ぶのは間違いなくこれです。
ただし、最も値段の高いテスターです。
2台目に欲しいのは、「デジタル」の「ポケットサイズ」

ポケットサイズの最大の武器は、持ち運びのしやすさです。
ランプの球切れ等の単純なを診断するのに、とても便利です。また、とても安価で手に入ることも魅力の一つです。
しかし、プローブが短かったり、プローブの交換ができなかったりするところが難点です。用途によって通常サイズと使い分ける必要があります。
3台目に欲しいのは、「アナログ」の「通常サイズ」

アナログの良さは、刻々と変化する電圧や電流が人間の目に見やすい(わかりやすい)ところ
「だんだんと電圧が上がっていく(下がっていく)様子」がわかりやすいので、アクセルセンサーや、エアフローメータなどの点検に最適です。
しかし、内部抵抗が小さく、抵抗測定時の電流がコンピュータなどの精密な電子制御装置を破損させてしまう恐れがあるため、使い分けが必要です。
また、デジタルに比べゼロ点調整をしなければならない点など、操作性の悪さが難点なので、3番目にしました。
ちなみに、私がディーラーで整備士をしていたころ、実際に持っていたテスターは2つです。
・デジタルの通常サイズ
・デジタルのポケットサイズ
アナログテスターは使用していませんでした。
アナログは便利な時はあるものの、「アナログでなければならない時がない」のが大きな理由です。逆にデジタルでなければならないところは数多くあります。
初めてテスターを購入する人は、まず最初に、「デジタル」の「通常サイズ」を購入することをおすすめします。
整備士さんの中には、「俺はアナログが好きなんだ」と言って、好んでアナログテスターだけを使用する人もいますが、単に、昔からあるアナログテスターしか使った事がないので、「アナログが好き」と言っている人が多いような印象を受けます。
本来はアナログとデジタル、それぞれの長所・短所をわかっていて、用途やシーンによって使い分けるものです。
おすすめのデジタルテスター(通常サイズ)
それでは、私がおすすめするサーキットテスターを紹介します。
サンワ CD771
ダントツで一番のおすすめテスター
最初におすすめしたいのは、三和電気計器(サンワ)のCD771です。サンワのスタンダードテスターの位置に定義されて長らく経ちます。何を隠そう、私が長く愛用しているテスターです。
価格、使いやすさ、オプションの豊富さ、メンテナンスのしやすさ、どれをとっても大満足です。性能も自動車整備には十分すぎる性能です。購入して失敗しない、間違いないテスターです。
購入するときはカバーやプローブなどのオプションもよく考えて購入してください。
三和テスターはオプションを選ぶのもめちゃくちゃ楽しい。
ちなみに、三和テスターではこれよりも高機能で高価なモデルがあります。
三和テスター最上級モデル
こちらは職場で使用していますが、高価なので一番のおすすめにはしませんでしたが、人より良いものを使いたい人はいいですね。
関連記事>>>サンワテスターのアフターサービス。4年で故障したサーキットテスター【CD772】
カイセ KU-2603
さて、もう一つのおすすめは、カイセのKU-2603です。
カイセは長野にある会社で三和電気計器さんの立派な対抗馬。以前に先輩が使っていたので、使わせてもらったことがありますが、とても使いやすく、なにやら地味でクロウト感があり、渋くていい感じに見えます。
性能は上記のサンワCD771と同等以上です。次にテスターを購入する機会があれば、検討したい2017年発売の1台です。
おすすめのデジタルテスター(ポケットサイズ)
デジタルのポケットサイズのおすすめは、サンワのPM-3です。
様々な分野で使われているこのポケットテスターは、なんといってもコスパが最高です。
なんと3500円程度で手に入ります。
性能も十分で、これ1台で何もいらないんじゃないかと思えるほどです。なんかボディーも白くてかっこいいですね。外国産のよくわからないポケットテスターを買うなら、絶対こっちのほうがいいと思います。
またこのテスターは自動車整備業界以外の業界でもたくさん使用されています。
アナログテスター(通常サイズ)
アナログテスターは自分のものは持っていませんが、実際に使用して、良かったものをおすすめします。
なんと、この日置製のテスターはコンクリート1mの落下に耐えるそうです。
ということで、おすすめテスターはすべて国産のものになりました。あくまでも私個人の意見なので、ご参考までに。
サーキットテスターの使い方が良くわかる本
- テスターの使い方をちゃんと教わる機会がない
- 新人に使い方を教えるのに、良い教材はないか
こんなことを整備士さんに言われることがよくあります。
なるほど確かにそうだと思います。私もディーラーのエンジニアでしたが、テスターの使い方をしっかり教わった記憶がありません。
ということで、参考になる本を1冊紹介します。
テスターの職人技/市川清道
非常にわかりやすく、たとえあなたにテスターの知識が全く無かったとしても、必ず約に立ちます。
自信を持っておすすめできる数少ない本です。絶対「買い」です。
自動車整備士とサーキットテスター

電気回路を点検するのに使用するサーキットテスターは、自動車整備士にとっては必要不可欠なものです。「サーキットテスターを使わない(使えない)整備士」は、複雑で高度化された現在の自動車整備に対応することができなくなることは間違いありません。
そして以前は、サーキットテスターは会社に一つや二つのツールとして存在していましたが、最近では他の手工具と同じように、自分で購入して自分だけが使用する「マイツール」となってきています。
自分専用のサーキットテスターが欲しい」
これはもう、整備士であれば誰もが思うことだと思います。
しかし実際に、サーキットテスターを選ぶのはなかなか難しいものです。
- 工具屋さんに勧められたからよくわからないけど高いものを買った
- ホームセンターで安いものを購入して失敗した
こんな整備士さんが実に多いです。
それでも不自由なく使用出来れば問題ないですが、でもどうせ買うなら、使いやすく良いものが欲しいと思いませんか?
愛着が沸くようなテスターに出会い、ずっと長く使用したい
私はもちろん、多くの自動車整備士にとって、サーキットテスターはそのような対象になっているのです。
私は以前、一級整備士としてディーラーで10年間働いていました。電気的な整備はとても得意です。
もちろん、私にとってもシステムの故障診断を行うにはサーキットテスターは無くてはならないもので、いろんなテスターを使用してみましたが、性能や使いやすさについて、やはり私なりにこだわりがあります。
次に、サーキットテスタの性能について簡単に解説します。
自動車整備士に必要なサーキットテスターの性能

サーキットテスターは、電気を取り扱う全ての職業の人が使用します。また、電子工作などを趣味とする人たちにとっても必要不可欠なものでしょう。様々な職業で、場面で、必要とされているサーキットテスターは、様々な性能を持ち合わせています。
しかしその中で、自動車整備士にとって必要な性能はなんでしょうか。また、それほど必要のない性能はなんでしょうか。
必要な性能
取扱いの容易さ
簡単な操作で使用できることは第一条件です。わかりやすいテスターが測定ミスを防ぎ、誤診を防ぎます。
持ち運びの容易さ
自動車整備ではサーキットテスターをいろんなところで使用します。車の室内であったり、エンジンルームであったり、車の下だったりします。簡単に持ち運べなければ、使うのがおっくうになってしまうでしょう。
耐久性
肝心な時に使えなくなるような、すぐ壊れるテスターは避けましょう。
特に自動車整備においては、衝撃耐久性、耐熱性が必要です。
ちょっと落としたくらいで壊れるテスターにはイライラし後悔すること間違いなしです。
メンテナンスの容易さ
どうしても、テスターを長く使用していると、壊れたり、壊してしまったりするものです。
不適切な取扱いをするから壊れるのは間違いないのですが、気をつけていてもヒューズを切ったり、プローブが断線してしまったり、長年使用すれば必ずトラブルは起こります。
その時にすぐアフターパーツが手に入るかどうかはとても重要です。特に海外製のものは要注意です。使い捨てだと考えられる人は良いのですが・・・。
オプションの豊富さ
自動車整備でテスターを使用する場合、標準のプローブでは測定が難しい場面が必ず出てきます。ワニ口クリップの先端や、細い先端が必要です。
また、カバーやケースなども専用のものがあると便利です。そういったオプションがあるものはとても便利です。
↑ オプションのケース(サンワ)
↑ オプションのプローブ(サンワ)
それほど必要のない性能
正確性(確度)
サーキットテスターの値段を大きく左右するものが確度です。確度は誤差範囲のことですが、自動車整備においては、5Vや12Vや24Vの電圧を計測することが多く、数mVの誤差はそれほど問題にならないことが多いです。
もちろん、誤差の少ない正確なテスターのほうが良いですが、値段に大きく左右するので、考えものです。
波形測定性能
デジタルサーキットテスターの中には、矩形波や三角波などの波形を電圧で表示できる高級なものがあります。この機能は基本的に自動車整備では必要ありません。自動車整備ではオシロスコープを使って高度な診断をするからです。
そしてこの機能もテスターの値段に大きく左右されるので、あまりこだわらない方がいいでしょう。
周波数測定、コンデンサチェック、ダイオードチェック等の機能
最近のデジタルサーキットテスターは、デジタルマルチメーター(DMM)と呼ばれ、従来からある「電圧」「電流」「抵抗」を測定する以外にも、様々な電子部品の点検ができる機能がついているものが多いです。
これらの機能は、自動車整備においてはそれほど必要なく、無くてもそれほど困ることはないです。また、あったとしてもそれほど便利なものではありません。それほど値段も変わらないので、私はどっちでもいいと考えています。
まとめ
おすすめサーキットテスターは次の3つ
この記事を見て、良いサーキットテスターに巡り合う整備士の方が、一人でも多く増えればいいなと思います。
以上、自動車整備におすすめのサーキットテスターでした。