近年、整備用スキャンツールが認証工具になり、OBD検査が開始予定など、整備業界ではスキャンツールに対する関心がさらに高まっています。
この記事では、日立製の故障診断機(スキャンツール)、HDM9000とHDM330について一級整備士の管理人が実際に操作した情報をもとに解説します。
日立HDM9000は日立グループの製作ではなく㈱ツールプラネットが製作するOEM製品です。㈱ツールプラネットでは「TPM-5」という商品で販売されており、基本的に機能は同じです。その他にも外見が似ているものは、ツールプラネット製で「中身が同じ」のものが多いです。このレポートは、基本的にそれら類似商品全てに当てはまるものと考えてください
この記事を書いた人:きりん
元ディーラーの一級整備士で整備士ねっと管理人です。自動車整備業界に長く携わり、現在は整備業界のコンサルなども行っています。twitterでたくさんの整備士さんや業界の人と繋がっているのでチェックしていただけるとうれしいです。(seibisi_net)
HDM9000レポート
評価
総じて良い
- レスポンス・応答性が良く、サクサク動く
- タッチパネルじゃないのが使いにくい
- ボタン連打が面倒
HDM9000の一番の良いところは、レスポンスの良さです。
管理人は仕事がら、いろんなスキャンツールを使いますが、その中でもこのスキャンツールはもっともレスポンスが良いです。
例えば、他のスキャンツールと一緒に一斉に操作し始めて、最も最初に故障コードをアウトプットできるのは、このHDM9000ではないかと思うほど早いです。
逆に、悪いところは操作感です。
液晶部がタッチパネルじゃないので、スクロールしにくく、データモニタの画面などで、ボタン連打せざるを得ません。
総合的には、全体的に悪くないスキャンツールかなと思います。
さらに詳しく、写真を多く使ってレポートしてみます。参考にしてください。
収納ケース
付属のキャリングケースは、一般的なビジネスバッグより一回り小さい感じです。しっかりしているので悪くはないです。
本体サイズ・重さ
- サイズ:約 24 cm × 14 cm
- 重さ:470g
サイズ感は写真のとおりで、手の平より一回り大きいです。インターネットのカタログなどを見て、私がイメージしていたものよりかなり大きく感じました。
写真右上に写っているのが、日立のHDM330ですが、こちらはスマホのような感じなので、HDM9000はそれと比べるとかなり大きいです。
そしてかなり軽い。
気になったので、G-SCAN3(別の診断機)の重さを調べたところ、1.5 kgだったので、こちらは約1/3の重さです。
おそらく、この写真を見たみなさんがイメージしているより軽いと思います。空の弁当箱を持っている感じに近いです。
使用感・操作感
ステアリングに引っ掛けて使用できます。これは普通に便利です。
そして問題はここ。
液晶が、タッチパネルじゃない
写真のように、アイコンをスマホのようにタップしても何もおきません。いかにも押せそうなアイコン表示なのですが、フェイクです。
以前からツールプラネット系のスキャンツールはこのパターンなので予測できましたが、とても残念。
なので、このスキャンツールは本体中央のボタン操作でのみ、操作することになります。
そしてこの操作ボタンの節度感や押しやすさが、あまり私の好みではありませんでした。これも残念。連打あるのみです。
呼び出しスピード
上述したとおり、レスポンスが良く呼び出しのスピードが速いです。
ダイハツムーヴのオールダイアグ(全てのECUのDTC一括呼び出し)が、ボタン押してから完了まで約25秒でした。
メーカー純正機でも、ここまで早いものは無いのではないでしょうか。
例えば、G-SCANは数分かかります。ボタンを押してからタバコを吸いに行く人もいるくらいです。
もちろんメーカー・車種によると思いますが、私が知る限り、大抵のスキャンツールより早そうです。
機能
- データモニタ
- フリーズフレームデータ(時系列は無し)
- レディネステスト
- 作業サポート(メンテナンスモード・エーミング・DPF含む)
- アクティブテスト
- カスタマイズ
カスタマイズやレディネステストモードはありがたいです。
エーミングやDPFについて、どの車種やシステムに対応するかはわかりませんでした。
データモニタについては、リスト表示はするものの、グラフ表示はできませんでした。
ただし、OBDⅡに指定されているデータのみグラフ表示できました。(下の写真)しかしこれも、グラフの軸を変更することができないので、参考程度にしかならないと思います。
これができるなら、全てのデータに対応して欲しいと思いましたが・・・少し中途半端ですね。
エーミングの対応状況について
具体的に、どの車種やシステムに対応しているのかわかりませんでした。公式webサイトでも、詳細不明だったので、気になる人は直接問い合わせが必要かもしれません。
HDM9000の価格
17~20万円位(2023.7月現在)
インターネットでみると、15万円くらいでも手に入りそうですが、部品商などから購入すればこのくらいにはなりそうです。
個人的には、G-SCAN3が60万円以上するので、1/3位の金額でこの機能なら満足できるかなと思います。
ネット価格をチェック
HDM330レポート
サイズ感・使用感・機能など
HDM9000の機能のうち、データモニタやアクティブテストの機能を省いて小さくしたような機種で、コードリーダーに近いです。
しかし、ただのコードリーダーとは違って、作業サポートなどに対応しているので、あれば便利です。少し複雑な故障診断をする時には向いていません。
サイズはスマホサイズで、片手で操作できます。写真のとおり、HDM9000と比べるとかなり小さいです。
データモニタ機能が無いというのは、故障診断するには致命的なので、あまりおすすめできませんが、「とりあえず、安価なものを試したい」、「個人で所持したい」場合などには手軽で良いかもしれません。
HDM330の価格
6~7万円
こちらも値段相応に思います。
ネット価格をチェック
スキャンツール補助金
HDM9000はスキャンツール補助金の対象になっています。うまく利用すれば1/3の金額を補助されるかもしれません。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
>>>例年のスキャンツール補助金の概要を解説/2021以降はどうなるか
まとめ
HDM9000の使い勝手は悪くありません。
価格も20万円程度なので、他のスキャンツールと比べても、それほど高くないので、購入を検討する価値は十分にあると思います。
- レスポンス・応答性が良く、サクサク動く
- タッチパネルじゃないのが使いにくい
- ボタン連打が面倒
HDM330は、データモニタ機能が無いので故障診断には向きませんが、作業サポートなど多くの場面で役に立つので、個人で持つには良いかもしれません。
この記事を参考に、購入を検討してみてください。
以上、【HDM9000/HDM330】日立製スキャンツールのレポートでした。