- あなたの車が、新車で買ってから4年後に壊れてしまった場合、誰がどのように保証してくれるでしょうか
- あなたの購入した中古車がすぐ、に壊れてしまった場合、誰がどのように保証してくれるでしょうか
購入した自動車の保証制度について、詳しく知る人はあまり多くはありません。
この記事は自動車の保証制度について、元ディーラーの一級整備士が詳しく解説します。
- 購入した自動車の保証の種類と内容
- 車の保証継承について
- 整備工場が行う保証の内容
この記事を書いた人:きりん
元ディーラーの一級整備士で整備士ねっと管理人です。自動車整備業界に長く携わり、現在は整備業界のコンサルなども行っています。twitterでたくさんの整備士さんや業界の人と繋がっているのでチェックしていただけるとうれしいです。(seibisi_net)
保証継承など、自動車の保証制度は自動車メーカーによって、取り扱いが違う可能性があります。実際に保証制度を利用したい場合には必ずメーカーディーラーに問い合わせてください。
車の保証は大きく分けて2種類
- 自動車メーカーの保証(2種類)
- 整備工場の保証
「新しい車なのに壊れた」等の場合は自動車メーカーの保証が当てはまり、メーカーの保証は一般保証と特別保証の2つあります。
「車検した後に壊れた」等の場合は整備工場の保証が当てはまります。
自動車メーカーの2つの保証

- 一般保証
- 特別保証
トヨタ自動車や本田技研工業など、自動車を製作するメーカーのことです。自動車メーカーに対し、自動車を販売している会社を「ディーラー(正規小売店、販売会社)」と呼びます。
1.メーカーの一般保証
項目 | 内容 |
---|---|
保証内容 | 消耗品以外の全ての部品に対する保証 |
保証期間 | 3年または60,000kmのどちらか早い時期まで |
保証の条件 | ①メンテナンスを実施していること ②依頼者が保証書の名義人であること |
一般保証の保証内容
消耗品以外の全ての部品が対象
一般保証の対象は、消耗品以外の部品が該当します。逆に、一般保証の対象とならない車の消耗品とは、次のようなものです。
- ブレーキパッド
- ファンベルト
- スパークプラグ
- エアクリーナエレメント
- ワイパーゴム
- エンジンオイル
- クーラント
- バッテリーなど
一般保証の保証期間
新車の購入から3年以内であり、なおかつ 60,000km 以上走行していないこと
60,000km走行していなくても買ってから3年経てば保証期間切れとなり、逆に買ってから3年経っていなくても、60,000km走行した時点で保証期間が切れ、保証の対象外となります。
一般保証の条件:①メンテナンスを実施していること
「自動車の持ち主は、12ヶ月ごとに定期点検をしなければならない」と法令で定められています(乗用車の場合)。また、適切な時期に日常点検も必要です。さらに、自動車メーカーでも12ヶ月ごとの点検を推奨しています。
このような、点検を実施していない自動車については、保証の対象外となります。
一般保証の条件:②依頼者が保証書の名義人であること
自動車メーカーは、新車購入時に保証書を発行しています。「保証書がない」「依頼者と保証書の名義人が違う」などの場合は、保証の対象外となります。
※中古車の購入等で保証書の名義人が違う場合は、ディーラーにて後述する保証継承を実施する必要があります。詳しくは後述します。
2.メーカーの特別保証
項目 | 内容 |
---|---|
保証内容 | 特別な部品に対する保証 |
保証期間 | 5年または100,000kmのどちらか早い時期まで |
保証の条件 | ①メンテナンスを実施していること ②依頼者が保証書の名義人であること |
特別保証の保証内容
エンジンやミッションなど、自動車メーカーが、特別に保証期間を長く設定している部品に対する保証
自動車の重要な部品に設定される保証で、整備料金が高額になる部品が設定されています。
特別保証の保証期間
新車購入から5年以内であり、なおかつ 100,000km 以上走っていないこと
特別保証の条件
- 保証条件①:メンテナンスを実施していること
- 保証条件②:依頼者が保証書の名義人であること
特別保証の保証条件は、上記一般保証の条件と同じです。
メーカーの保証を受けるには

ディーラーに保証修理を依頼してください。
ディーラー以外の整備工場では、保証を受けることができません。民間の整備工場や、車検チェーン店、カー用品店などでは、メーカーの二つの保証修理(一般保証、特別保証)は受けられませんので注意が必要です。
故障や不具合が保証の対象となるのかどうかを判断するのは自動車メーカーです。そして自動車メーカーは、保証に関わる整備作業の全てを、唯一信頼を置く整備工場であるディーラーに任せています。
そのため、ディーラー以外の整備工場では、保証に関わる整備ができません。また、保証の対象になるのかを判断することもできません。
保証トラブル
「A民間整備工場で修理したのですが、その整備工場の人に『この部品はメーカー保証の対象になると思うから、ディーラーに行けばお金を返してもらえるよ』と、言われたのできました。」
私がディーラーで働いていた頃にこのような依頼がありました。しかし、このような依頼は認められません。
仮に、保証の対象に該当するとしても、他の整備工場で修理してしまったものは認められません。また、金銭で保証するというのは基本的にありません。この場合、かわいそうですが対応できません。
この件に関しては、先に修理してしまったA整備工場に責任がありますが、あなたも保証の対象になるかもしれないと感じたら、必ずディーラーに入庫してください。
自動車メーカーは整備料金を保証するのではなく、部品や部品交換に関わる整備自体を保証しています。
メーカーの保証の対象とならないケース【よくある】
壊れた部品が一般保証又は特別保証の対象になっていたとしても、保証が受けられないケースをご紹介します。
ケース1:メンテナンスをおこたった事で生じた故障
自動車のメンテナンスをしていなければ、保証の対象となりません。
例えば、エンジン本体は5年、または100,000kmの特別保証ですが、3年以上オイル交換を実施せずエンジン本体を壊してしまった場合、エンジンの保証は受けられません。
オイル交換などのメンテナンスをしなければ、エンジンは当然壊れます。ユーザーがメンテナンスを怠って故障した場合は、自動車メーカーが責任をとるべき案件では無いという事です。
ケース2:保証書の名前と載っている人が違う場合
保証書の名前が自分の名前でない場合、メーカー保証は受けられません。
新車で自動車を購入すると、自動車メーカーは保証書を発行します。
保証書を見たことが無い人もいると思いますが、メンテナンスノートと呼ばれるものに、保証書がついています。見たことが無い人は、メンテナンスノートを開き(おそらく車検証と一緒のケースに入っています)、一度確認することをおすすめします。
確認すべきは、保証書の名前が自分の名前になっているかどうかです。
特に中古車を購入した場合、保証書の名前が前の持ち主になっていることがありますので、注意が必要です。この場合には、保証継承をすることによって、保証を受けることが可能になります。

新しめの中古車は保証継承をしよう

ディーラーで手続きを踏めば、保証書の名前を自分に変更してもらい、保証を受けることができます。(保証継承)
前述のとおり、自動車メーカーは新車登録時に、新車購入者に対して保証書を発行します。
中古車を購入した場合などには、保証書の名前が前の持主になることとなり、メーカーの保証を受けられません。しかし、そのような場合には、ディーラーで手続きを踏むことで、保証書の名前を自分(新しい所有者)に変更してもらうことができます。
この手続きを「保証継承」と言います。
保証継承の手続きは、ディーラーで12ヶ月点検程度の点検をしてもらい、問題なければ保証書の名前を書き換えてくれます。
保証継承は有料です。(1~2万円程度)
大規模中古車店の場合、販売する中古車のうち、保証期間が切れていない車は、全て保証継承を行ったのちに販売してくれる場合がありますが、保証継承をしないで販売する業者も数多くあります。
特に未使用車と呼ばれる車は要注意です。
未使用車は新車に近いので、メーカー保証が付いていて当然と思うかもしれませんが、未使用車の保証書の名前は、最初に購入した販売業者になっていることがほとんどです。
保証継承をしなければ、いかに未使用車と言えど、メーカー保証は付いていません。
5年100,000kmを経たない、比較的新しい中古車を購入する場合は、購入時に保証継承をしてもらうことをおすすめします。
保証継承をしないで購入すると
例えば中古車を買った後に、メーカー保証の対象となる部品が壊れてしまい、修理費が10,000円の整備をする場合のそれぞれのパターンを考えます。
- 保証継承済み→費用は0円
- 保証継承なし→10,000円の自己負担
比較的新しい中古車の購入時は、保証継承をしてもらうことが重要です。
保証対象の部品なのに有料修理?
どの部品が一般保証(3年保証)で、どの部品が特別保証(5年保証)なのか、どんなケースで保証の対象となるのかといった、保証内容については、一般の方が理解するのは難しく、本来は整備工場がお客様に説明・提案しなければなりません。
しかし、整備工場の整備士の知識がとぼしい場合があり、保証で直せる部品を有料で直してしまっているケースが時々あるようです。その場合、誰も気付きません。もったいない限りです。
これを確実に防ぐためには、ディーラーで車検や定期点検を受けることが大事です。
ディーラーで車の不具合を見つけた場合には、それが保証対象であるか確実に判断し、対象である場合にはもちろん無料で修理してくれます。
しかし、ディーラー以外の整備工場でも、ディーラーに保証で直せるかどうかを確認し適切に対応してくるところもたくさんありますので、やはり信頼できる整備工場を見つけることが大事です。
メーカーの保証まとめ
自動車には3年保証の部品と5年保証の部品があり、3年保証の部品を一般保証といい、5年保証の部品を特別保証といいます。
メーカーの保証は、ディーラーでしか受けることができません。民間整備工場や、車検チェーン店、カー用品店では受けることが出来ませんので、注意が必要です。
また、保証書の名義と、乗っている人の名義が違う場合は、保証を受けられませんので、中古車などを購入する場合は、保証継承の手続きをすることをおすすめします。
整備工場の整備保証
- 保証内容:整備した箇所に不具合が起きた場合
- 保証期間:6ヶ月または10,000kmどちらか早い時期まで
次に、新車の保証ではなく、整備工場が行う整備保証について説明します。
整備工場の保証とは、車検などで整備した箇所に関して、整備を実施した整備工場が保証するものです。これを業界では単に「整備保証」と言います。
整備保証は、ほとんど全ての整備工場が行っています。ディーラーでもディーラー以外の整備工場でも同じように保証してくれます。
具体的には「車検の数日後に、ブレーキが効かなくなった」等の不具合が起きた場合、車検を実施した整備工場がブレーキを無償で修理してくれるというものです。
注意して欲しいのは、整備保証の対象になるのは、整備した箇所に関して不具合が起きた場合です。整備した箇所以外は保証の対象になりません。
次のような場合は整備保証の対象になりません。
- 車検した翌日にエアコンが効かなくなった
- 車検した翌日にナビが壊れた
なぜなら、車検ではエアコンやナビの点検・整備をしないからです。
私がディーラーで働いていた時の経験でも、こういったケースがたくさんありました。
お客様は、「車検した次の日にエアコンが効かないのだから、当然直してくれるだろう」と考えると思いますが、整備工場側からみると、「エアコンは点検も整備もしてないので責任はない」と考えます。そこで時々トラブルとなります。おそらく多くの整備士が経験することです。
しかし、このような場合は、整備保証の対象になりません。整備工場に責任はありません。整備保証は整備した箇所に関して不具合が起きた場合だけです。
実際には・・・
「整備していないところは保証の対象とならない」と書きましたが、私の経験からすると「そこは整備してないから保証の対象にならないよ」と、整備工場側がお客様に突き返すことは難しく、「部品代だけ負担していただけませんか?」などと折り合いをつけることも多かったと思います。
対応は整備工場によって違うと思いますが、車検などの整備後すぐに、別のところが壊れてしまうという事案は、整備工場にとっては不運な事例です。
まとめ
- 新車から3年または60,000キロまでメーカーが保証→メーカーの一般保証
- 新車から5年または100,000キロまでメーカーが保証→メーカーの特別保証
- 整備した箇所に関して整備工場が保証→整備工場の保証
それぞれ細かい条件があります。
自動車の保証は、なかなかわかりにくいものです。やはりこういう時はプロに聞くのが一番。信頼できる整備工場をもっていることが大事です。
もし、あなたが保証について何かトラブルを抱えているのであれば、この記事を読み返して冷静に対処して欲しいと思います。
以上、自動車の保証制度・保証継承についてでした。