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カーエアコン用新冷媒「HFO-1234yf」の搭載車種・価格と必要な設備解説/新冷媒を基礎から学ぼう

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現在、新型車に搭載される自動車用エアコンの冷媒が「HFC-134a」から、新冷媒「HFO-1234yf」に順次切り替わっています。整備工場や板金工場では、新冷媒「HFO-1234yf」に対応する設備導入を検討する必要が出てきています。

この記事では、新しい冷媒「HFO-1234yf」について、整備士ねっとチームが徹底解説します。

読めば、新冷媒に対する基本知識が全て身につきます。

※2023年7月現在の記事です

目次

「HFO-1234yf」搭載車種(メーカー別)

ここでは、国産乗用車のHFO-1234yf搭載車種について掲載します。

なお、情報は2023.7月現在のものであり、実際に整備するにあたっては、取扱説明書やサービスマニュアルで確実に確認してください。

今後は小型車メーカーについては、「新型車(モデルチェンジ)」はもちろん、継続生産車についても「マイナーチェンジ」のタイミングで、多くの車両がHFO-1234yfを搭載するものと思われます。

トヨタ:1234yf搭載車

車種備考
クラウンH30.6~
プリウスR2~
カローラR2~
カローラスポーツ全て
カローラツーリング全て
カローラクロス全て
RAV4H31.4~
C-HRR1.10~
ハリアーR2.6~
ランドクルーザー(プラド)R2~
ヤリス(クロス)全て
アクアR3.7~
86R3.7~
プリウス(PHV)R2.7~
カムリR3~
アルファード
ヴェルファイア
R2.1~
グランエースR2~
センチュリーH30~
MIRAI要確認

レクサス:1234yf搭載車

車種備考
IS300(h)H30.6~
IS350R2~
ES300hR2~
LS500(h)全て
UX250(h)全て
UX300e全て
NX250H31.4~
NX350(h)R1.10~
NX450hR2.6~
RX300R2~
RX450h(L)全て

ダイハツ:1234yf搭載車

車種備考
タントR1.8~
アルティスR3~

ホンダ:1234yf搭載車

車種備考
N-WGNR1.8~
N-ONER2~
N-BOXR3~
ヴェゼルR3.4~
フィットR2~
フィットEVH24~
ホンダe全て
シビックR3.9~
クラリティFCH30~
NSXR2~

日産:1234yf搭載車

車種備考
ルークスR2~
ノート(オーラ)R2.12~
デイズR2~
~

マツダ:1234yf搭載車

車種備考
MAZDA2H31~
MAZDA3H31~
CX-3R2~
CX-30R2.1~
MX-30HVR2~
MX-30EVR3~
CX-5R3~
フレアR2~

スバル:1234yf搭載車

車種備考
シフォンR2~
レガシーアウトバックR3.12~
BRZR3.7~
WRX S4R3~
レヴォーグR2~

三菱:1234yf搭載車

車種備考
デリカD5H31.2~
エクリプスクロスR2~
デリカD2R2~
ekクロス(スペース)R2~
ekワゴンR2~
アウトランダーPHEVR3~

スズキ:1234yf搭載車

車種備考
ハスラーR2.1~
ワゴンRR2.1~
ソリオR2.11~
スイフトR2.5~
ラパンR3~

冷媒変更による業界への影響

冷媒が変わることに対する整備工場の影響は、次のようなものが考えられます。

影響1:HFO-1234yf 対応設備の導入が必要

DENSO:1234yf用回収再生充填器

新冷媒HFOには専用の設備が必要です。

新冷媒はHFCと特性こそ似ているものの、回収再生充填器やゲージマニホールド等の整備機器を共有することができません。

そして、回収再生充填器は100万円以上のものがほとんどです。

特に板金工場では、まっ先に必要になるケースが多く、負担が増えることとなります。

この新冷媒を扱う整備工場は、決して安く無い設備投資が必要です。

影響2:冷媒の価格が高額

R134aに比べて10倍以上の価格

整備工場への影響と言うよりは、ユーザーや保険会社への影響が大きいですね。

需要が増えればこの値段は下がっていく可能性はありますが、ここ数年では、大きく変わっていません。

HFO-1234yfの価格

yf缶

200gで、7,000~12,000 円

200g缶(上記写真)の場合、従来冷媒「HFC-134a」なら原価500円位から買えますので、新冷媒は15〜20倍の価格です。 ※整備士ねっと調べ

現在は米国・ハネウェル社など、数社独占状態で、輸入に頼っているため非常に高額です。

しかし、需要が増えるとともに、国内企業でも製造販売されるようになれば、徐々に価格が下がっていく見込みです。すでに、複数の国内企業が開発をすすめています。

新冷媒が必要な理由と背景

ここからは知識です。整備士さんであればひととおり読むことをおすすめします。

まずはじめに、簡単に自動車用エアコン冷媒の歴史を振り返ってみます。

遠い昔、自動車にコンプレッサー式のエアコンが誕生し、その冷媒としてフロン(CFC12)が使われ始めました。

ところが、1970年代にオゾン層破壊の問題が取り上げられ、フロンはその原因のひとつであることがわかり、国際的に代替フロンの開発・実用化が急がれました。

1980年代後半にはCFC12は、国際的に製造・輸入が禁止され、その代わりに「代替フロンHFC134a」が使用され始めます。

また、このとき日本ではCFC12を含む特定フロンを1996年までに全廃(新型車には使用しない)することとなりました。そして代替フロンHFC134aは、オゾン層を破壊しにくいため、世界のほぼ全ての車両が使用することとなり今日にいたっています。

しかし、現在使用されている代替フロンのHFC134aは、オゾンを破壊する事はないものの、GWP(地球温暖化係数)が高い温室効果ガスだということがわかってきました。

そうなると、適正な取り扱いが必要になります。

日本においては、自動車リサイクル法により規制をし、自動車の最終所有者がフロン回収処理に掛かる料金を負担しています。

そして、近年の環境問題に対する国際的な気運の高まりから、代替フロンHFC134aよりもっと環境負荷の少ない新冷媒の開発・実用化がせまられています。

EUの自動車が新冷媒HFO-1234yfへ

前述したような国際情勢を受け、EUでは自動車エアコン用冷媒の規制強化に踏み出し、2013年1月以降に販売される新型車については、GWP(地球温暖化係数)が150を超える冷媒の使用を規制しました。

これまで使用されていた代替フロンHFC143aのGWPは、およそ1,300(規制値の10倍近く)であり、事実上HFC134aの使用ができなくなりました。

そして、それに変わる新冷媒として登場したのがHFO-1234yfという冷媒です。

今現在、EU諸国の新型車にはこのHFO-1234yfがすでに搭載されて販売されています。そのため、日本国内でも一部の輸入車において搭載され流通し始めています。

アメリカの自動車が新冷媒HFO-1234yfへ

自動車における環境問題に対して、世界一厳しい規制を設けるアメリカ(カリフォルニアを中心として)では、前述したHF-1234yfを搭載する自動車を販売すると、米国環境保護局(EPA)のクレジットを得ることができるため、近年爆発的に普及すると見込まれています。

EPAのクレジット制度(ZEV規制)とは、電気自動車などの環境に優しい自動車をたくさん販売した自動車メーカーを経済的優位に立たせ、逆に環境にやさしくない自動車をたくさん販売している自動車メーカーに対して巨額の罰金を課す仕組みであり、結果的に環境にやさしい自動車を増やす政策です。

この制度は自動車メーカーによっては大変に厳しいものであり、日本の自動車メーカーも最近は苦戦を強いられています。自動車を売れば売るほど赤字が出る状況にもなりかねないもので、カリフォルニア市場からの撤退を余儀なくされる自動車メーカーもあるくらいです。

一方で、この制度によって巨額の利益を生み出したのが、電気自動車専門のベンチャー企業であるテスラモータースであることは、あまりにも有名です。

具体的には、環境にやさしい自動車を販売するとクレジットがもらえ、やさしくない自動車の販売にはクレジットを引かれます。最終的にクレジットがマイナスになると巨額の罰金制裁が課せられます。

アメリカでの販売を行う自動車メーカーにとって、クレジットはとても重要なので、HFO-1234yfの搭載車両がアメリカで増えることは間違いないと見込まれています。

さらにアメリカでは、近い将来にEUと同じようにHFCの完全撤廃を検討しています。

日本はどうなる

日本では2023年にEUと同じ基準(GWP150以下)に規制されることが目標とされています。

つまり、2023年以降の新型車に今現在使用されているHFC134aが搭載できないことを意味し、EUやアメリカに遅れて同じ基準にするということになりそうです。

また、自動車メーカーはHFC134aの搭載車が、既に規制が始まっているEUやアメリカで販売できなくなるため、その規制が始まる前から次々と新冷媒を導入すると思われ、その搭載車はこれから一気に加速していくはずです。

現にトヨタはアメリカで販売しているタコマやレクサスに既にHFO-1234yfを搭載しています。もう国内で販売される日本車へのHFO-1234yfの導入は必然となっています。

HFO-1234yf の時代がくるとは限らない!?

ここまで読んだ人は、これからは新冷媒HFO1234yfの時代が長く続くと思われたかも知れませんが、実はそうとも限りません。

2017年、ダイムラー社では全く新しい冷媒CO2冷媒の車両を開発したと発表しました。今後ダイムラー社ではこのCO2冷媒を搭載していくというものです。

EUやアメリカの基準ではGWP150以下という規制があるだけで、それはHFO1234yfでなければいけない訳ではありません。条件を満たせばその他の種類の冷媒でも問題ありません。

今現在、「HFO-1234yf」は次世代冷媒の最有力候補と言えそうですが、将来的にはどうなるのかは不明確で、当然そこには自動車メーカーや国や企業の思惑があることも間違いありません。

今後、このカーエアコン冷媒情勢がまた変わる可能性が十分にあります。整備工場や板金工場を営む人は、常に新しい情報の入手が必要です。

HFO-1234yfとは

最後に、この新冷媒「HFO-1234yf」とはどんな冷媒なのかを簡単に説明します。

特性はHFC134aととても似ており(同等の性能を有する)、それでいてGWP(地球温暖化係数)が1以下と極めて低く、次世代冷媒の最有力候補となっているものです。

HFC134aのGWPが1,300なので、HFO1234yfは実に1,300分の1以下であり、EUで規制されるGWP150以下を完全にクリアします。

一方で、この冷媒はわずかながら可燃性があり、取り扱いや安全規制に課題があります。

新冷媒 HFO1234yf の課題

  • 事故時の車両火災の原因になる可能性
  • 解体時の取り扱い
  • 整備時の取り扱い
  • 保管時の取り扱い
  • 運搬移動時の取り扱い

これらの課題はあるものの、アメリカのデュポン社やハネウェル社を筆頭に、日本でも旭硝子などが開発・実用化しており、普及がすすめばコストダウンやさらなる技術革新が進み普及することは間違いないでしょう。

以上、自動車用エアコンの新冷媒「HFO-1234yf」についての解説でした。

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