近年、派遣会社に登録して働く「派遣整備士」という働き方が定着しつつあります。
この時代に、責任や残業、プレッシャーのない「派遣社員の整備士」という働き方を選ぶ人がいることは、うなずけることかもしれません。また、派遣整備士は正社員として企業で働くよりも、給料が高いケースもあるということも大きな特徴となっています。
この記事では、今話題の派遣整備士の魅力や就労事情について整備士ねっとチームが詳しく解説します。
派遣整備士の仕組み・特徴

派遣整備士は派遣会社との雇用関係
派遣社員と正社員の最大の違いは、雇い主の違いです。
派遣社員は、人材派遣会社と雇用契約を結んで、企業に派遣される社員のことで、実際に働く企業との雇用関係はありません。給料は実際に働く企業から出るのではなく、派遣会社から出ることになります。
派遣先の企業にとっては、必要な時にだけ必要な人材(労働力)を確保できるので、とても便利な雇用形態となります。そのため、企業側からすると「人材を外注する」ようなイメージです。
派遣整備士の数
派遣整備士は増えつつあります。
本来派遣社員は、オフィスワークや単純な作業が多い製造業に多い雇用形態でしたが、今では様々な職種において派遣社員が増えつつあります。
自動車整備士においても例外ではなく、今では自動車整備業界専門の人材派遣会社も存在しており、派遣整備士は全国に数百~数千人規模でいると思われます。
派遣整備士の契約期間
3ヶ月ごとの契約更新が多く、最長で3年間
派遣整備士は、人材派遣会社から斡旋された整備工場で働くことになりますが、同じ整備工場で働く期間は、3ヶ月毎に更新されていくことになります。従って、派遣先の意思により、突然3ヵ月後に契約を切られてしまうことがあります。いわゆる「派遣切り」です。
更新されるかどうかは、その整備士の能力や、整備工場側の事情で、一方的に判断されることになります。
ただし、その整備工場をやめることになっても、人材派遣会社がまた次の整備工場を斡旋してくれます。現在自動車整備士は人手不足なので、次の仕事が見つからないことは少なく、そもそも長い期間更新する整備工場が多いので、仕事が無くなってしまうという点については、それほど心配いらないかもしれません。
また、同じ整備工場で働くことができるのは、法律で最長3年と決められています。それを超えて同じ整備工場で働くことはできません。(派遣社員という雇用形態の場合)
派遣整備士の給料

正社員より高い場合もある
派遣整備士の求人情報を見てみると、時給2,000円を超える求人が多数見当たります。時給2,000円は8時間労働で20日働くと一ヶ月320,000円の給料になる計算です。
整備士としての経験や2級3級の整備士資格の有無によって大きく変わりますので、資格を持っている人であれば、有利に働きます。実際に派遣整備士として働く私の友人(2級整備士)は、年収で400万円を超えています。
また、非正規雇用で働く人の待遇改善を目的に、下記の法律(同一労働・同一賃金)が施工されていますので、参考にしてください。
同一労働・同一賃金法
2020年4月1日から、「パートタイム・有期雇用労働法」が施行されています。正社員と非正規社員で、同じ仕事内容で給与が異なるような待遇を禁止しています。
参考:厚生労働省「パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために」
一方、福利厚生の部分ではどうしても正社員の方が有利ですので、一概に給料だけで待遇が良いとは決めつけられません。
福利厚生とは
福利厚生には下記のようなものがあり、中でも法定福利厚生は法律で定められたもので、企業には導入・実施が義務づけられています。
しかし、福利厚生は正社員に限って認められたものも多く、派遣整備士となる場合は、派遣会社から、または派遣先の企業からどの程度の福利厚生が受けられるのかを確認することが重要になってきます。
【法定福利厚生】
- 健康保険
- 介護保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災保険
- 子ども・子育て拠出金
【その他の福利厚生】
- 財形貯蓄や従業員持株制度など、財産形成に関する福利厚生
- 社員食堂や食事手当など、食事に関する福利厚生
- 健康診断やメンタルヘルス相談など、健康管理に関する福利厚生
- 法定福利厚生よりも充実した育児休業や企業内保育施設など、仕事・育児両立支援に関する福利厚生
- リフレッシュ休暇など、休暇に関する福利厚生
- 自己啓発に関わるサービスの提供や経費補助など
- 慶弔見舞金制度など
- 社宅や寮など、住宅に関する福利厚生
- 保養施設の充実やレクリエーションの実施など、余暇活動に関する福利厚生
- フレックスタイムやテレワークなど、働き方に関する福利厚生健康保険
- 退職前準備教育など
派遣社員と正社員の違い
一般的な、派遣整備士と正社員整備士の違いについて、下記の表にまとめました。
派遣社員 | 正社員 | |
---|---|---|
雇用主 | 派遣会社 | 勤務先企業 |
雇用期間 | 有期雇用 | 無期雇用 |
給与形態 | 時給制 | 月給制(年棒制) |
定期昇給・ボーナス | 無い場合が多い | あり |
勤務時間・休日 | 希望で選べる | フルタイム |
勤務地 | 希望で選べる(転勤なし) | 会社指定の勤務地(転勤あり) |
仕事内容 | あらかじめ契約した内容 | 会社の指示で変わる |
福利厚生 | 派遣会社による | 勤務先企業による |
採用までのハードル | 低い | 高い |
派遣整備士から正社員へ
派遣社員から正社員になることもある
例えば、派遣整備士として働いている整備工場から評価され、「正社員として採用したい」となった場合には、派遣の雇用形態から、直接雇用の正社員として働くことが可能になります。実際にこういった正社員登用の話は少なくありません。
派遣整備士のメリット

- 自由なライフスタイルで働ける
- さまざまな経験を積める
- サービス残業やハラスメントが起こりにくい
派遣整備士は自分の好きなライフスタイルに合わせて仕事ができる(選べる)ことが最大のメリットです。
仕事内容や勤務地、勤務時間・休日などを、ある程度自由に選べるということは大きな魅力です。
また、期間を区切って仕事や職場にチャレンジできますので、同じ企業に長くいるよりも、整備士として多くの経験を積むことが可能です。大型トラック・重機やバイクの整備など、たくさんの職種にチャレンジすることが可能です。
同時に、向いていない職場や仕事を、比較的簡単に辞めることができることや、雇用形態上、サービス残業やパワハラ・セクハラなど、いわゆるブラック企業にあるようなリスクを回避できることも大きな魅力です。
派遣整備士のデメリット
- 雇用が安定しない
- 収入が安定しない
- 昇給やボーナスがない
- 手当や福利厚生が充実してない
- 社会的地位が低い
派遣社員は有期雇用ですので、雇用や収入が安定しないという大きなデメリットがあります。そのため、派遣社員という働き方の選択をしている人は、自身の将来性について悩みを抱えている人が多いと言われています。
しかし、現在は終身雇用の時代はおわりを迎え、正社員であっても同じ企業で定年まで働く人は大きく減りました。デメリットになるかどうかは個人の考え方によるのかもしれません。
また、手当や福利厚生については、必ず確認することをおすすめします。特に交通費などが支給されない場合が多いので、あまりに遠い勤務地の場合は注意が必要です。
派遣整備士に向いている人
- ずっと自動車整備士で働きたい人
- 副業として働きたい人
- プライベートの時間を重視したい人
- 育児や介護と仕事を両立させたい人
- いち早く働きたい人
1.ずっと自動車整備士として働きたい人
自動車整備士の仕事にこだわりがあり、ずっと続けたいと思っている人は、派遣社員という働き方は向いています。
派遣整備士はあらかじめ仕事内容を定めて働くので、正社員のように、自分が希望する業務以外の仕事をしないで済みます。
一つの整備工場に長く勤務すると、整備作業以外にフロント業務や、営業業務をすることになったり、マネージャーなどの管理職につくことが多いです。配属や業務内容が変わってしまったことが原因で仕事を辞めてしまう整備士も多く、そのような人には派遣整備士は最適と言えます。
2.副業として働きたい人
派遣社員は副業OKの求人が多いです。
副業をしていたり、これから独立を目指す人にはマッチします。
現在整備士のトレンドとなっている「フリーランス整備士」などと兼業したい場合にも、派遣整備士は向いています。その場合は時短求人や、平日のみなどの仕事を見つけると良いでしょう。
フリーランス整備士についてはこちらの記事で解説しています。

3.プライベートの時間を重視したい人
派遣整備士は業務内容を定めて働くため、残業がない企業を選ぶことができます。
残業ゼロの職場や、土日勤務なしの現場が簡単に見つかります。
残業の多さに悩まされている整備士さんや、家庭の時間を犠牲にして土・日・祝日の仕事を余儀なくされている整備士さんも多くいると思います。
「なによりもプライベートの時間を大切にしたい」と考える整備士さんは、派遣社員に向いています。
そして、現在の多くの若者がプライベートの時間を大切にする傾向があります。
4.育児や介護と仕事を両立させたい人

自分のライフスタイルに合わせて仕事を選べるのが派遣社員の大きなメリットです。
世の中では、多くの人が育児や介護などの様々な問題や事情を抱えて生活しています。派遣社員は週2日の勤務や10時~15時の時短勤務などが可能な企業がたくさんあるので、仕事と仕事以外の何かを両立したい人にはピッタリの働き方と言えます。
5.いち早く働きたい人
派遣社員は採用のハードルが低く、条件次第ですぐに働くことが可能です。即日開始案件も多いので、とりあえずすぐに働いて、将来を考えたいという人にとっても派遣社員は向いています。
人材派遣会社を選ぶ方法
人材派遣の会社は日本中に山ほど存在し、サービス内容はどこでも同じではありません。また、近年は自動車整備専門の派遣会社も存在します。
しかし、どの人材派遣会社が良いのかについては一概に言えません。口コミやwebサイトを確認し、慎重に選びましょう。
人材派遣の会社を選ぶには、㈱リクルートが運営するリクナビ派遣が便利です。人材派遣の会社を検索できます。
- リクナビ派遣 約70.000社登録
※2023/1/12現在。人材派遣会社数ではなく、すべての派遣会社に登録されている求人企業数。
自動車整備士特化の人材派遣会社
自動車整備士に特化した人材派遣会社を2つ紹介します。
自動車整備工場の派遣に特化しているので、より効率がよく、整備士のあなたにぴったりのサポートを受けられる可能性があります。
この2つの企業は、リクナビ派遣のような検索サイトではなく、直接あなたをサポートする人材派遣会社で、自動車整備業界では有名です。
転職成功は求人情報を見ることが第一歩
- 今ではないが、いずれ転職したいと考えている・悩んでいる
- 良い企業からアプローチがあれば転職を考えてもいい
整備士さんの中には、このように考え、モヤモヤと日々を過ごす人も多いです。
転職にはリスクがあり、特に、家庭のある男性整備士は、強い不安や恐怖と戦わなくてはなりません。そのような不安やリスクから、なかなか転職活動に踏み切れないでいる人も多いと思います。
しかし、転職の話は沸いて出てくることはあまりなく、自ら、なんらかの行動に移さなければ時間が過ぎるだけになってしまいます。
幸いに、現在はインターネットを利用して誰でも簡単に求人情報を収集をすることができます。自分にどのような条件の転職先があるのか、自分の客観的な価値はどのくらいなのかを調べることができます。
転職(求人)サイトで求人情報を検索する
スマホで求人情報をながめるだけなら、ほとんどリスクがありません。あまりよい感触が得られなければ、転職しないのも良し、うまくやれそうな感触を得られれば、本気で考えるのも良しです。
デメリットや失敗を意識しすぎて何も行動に移さないのはよくないです。何も解決せず時が経つだけです。
まとめ
現在、派遣社員という働き方を選ぶ自動車整備士が増えています。
増えている理由には、自由度や給料の高さなど、たくさんのメリットがあるからです。
メリットとデメリットをよく理解したうえで、あなたも派遣整備士を選択肢の一つとして考えてみてはどうでしょうか。
以上、派遣整備士についてでした。参考にしてください。

