- ディーラーじゃない民間整備工場の給料・待遇・仕事内容が知りたい
これは、他の整備工場へ再就職を考える、多くのディーラー整備士が持つ疑問です。
それもそのはず、これまでディーラーという環境にしかいたことがない人にとって、民間整備工場のことがよくわからないのは当たり前。
そこで、この記事では民間整備工場とはどういうところなのか、特に指定を持たない小規模な認証工場について、ディーラーと比較しながら徹底解説します。
給料や、仕事内容など、これから整備士として再就職を考えるディーラー整備士さんは、必ず知っておきたい情報です。
注意
民間の認証工場と言っても、規模の大きなところから家族経営の小さなところまで、いろんなところがあります。この記事に書いてあることは一般的な話として、参考程度にしてください。
この記事を書いた人:きりん
元ディーラーの一級整備士で整備士ねっと管理人です。自動車整備業界に長く携わり、現在は整備業界のコンサルなども行っています。twitterでたくさんの整備士さんや業界の人と繋がっているのでチェックしていただけるとうれしいです。(seibisi_net)
民間整備工場の給料

再就職を考える人にとって、民間整備工場で働く整備士の給料については、最も気になるところですよね。
「ディーラー整備士」と「ディーラー以外の整備士」の給料を調査したデータは下記のとおりです。

出展:国土交通省「1.自動車整備業労働環境アンケート【事業者用】」H28年4月
※詳しく知りたい方は出展元を参照してください。給与の他にも、労働環境など、自動車整備士のさまざま実態調査になっています。
給料アンケートのポイント解説
民間整備工場の整備士の給料は、ディーラー整備士より安い
例えば、給料が35万円以上の割合は、ディーラーで約21%、ディーラー以外で約10%です。
ディーラー以外の工場(民間整備工場)では10%の人が35万円以上もらっていますが、その中には自ら整備を行う社長さんが入っていることが考えられ、ディーラー以外の整備工場で、従業員が35万円以上もらうのは、かなり厳しいかもしれません。
また、このデータに賞与が含まれておらず、わたしの知る限りでは、賞与はディーラーの方が高く、年収ではさらに給料の差が出ると思われます。
一ヶ月の給料は、ディーラー、ディーラー以外共に20万円~25万円の割合が最も高い
整備士の半数近くの人が20万円~25万円の給料です。地方ではここからさらに下がると思われます。(データは都市部と地方部が一緒になったデータです)
一ヶ月の給料が20万円未満の割合は25%程度
給料が20万円以下の人の割合は他業種に比べてもそれほど高くありません。
つまり、「手取り12万円」のような、悲惨な整備士は実際にはかなり少数派で、むしろ他業種のほうが多くいる可能性があります。
ただし、このデータには賞与(ボーナス)が含まれていない「一ヶ月の給与」となっていますので、その点には注意が必要です。
と、言うのも、ディーラーに比べて民間整備工場では賞与(ボーナス)が少ない会社が多く、ボーナスを含めた年収では思った以上に差がつく可能性が有るからです。
民間整備工場のボーナス

ボーナスの有・無し、支給額の多さ・少なさは、完全に会社による
多くのディーラーでは、一年に2~3度ボーナスが支給されていると思います。
民間の整備工場では、工場によってまちまちです。ボーナスが全くが出ないところも普通にあります。
いずれにしても、金額的にディーラーのボーナスほどは期待できないと考えた方が無難です。
やはり、ディーラーに比べて、民間整備工場の整備士は給料が安いと言えるかもしれません。
関連記事>>>自動車整備士の給料・年収の実態【元ディーラーの一級整備士が給与明細を告白】
民間整備工場の給料まとめ
- 給料はディーラーより低い可能性が高い
- 20万円以下の薄給となる可能性は、それほど高くない
- ボーナスは期待しないほうが無難
給与・収入については会社によって大きく違います。これはもう、再就職前に会社の事をできるだけ調べるしかありません。
ただ、がっかりする必要はありません。これらのデータに当てはまらない待遇の良い会社も数多くあり、転職する際には、給料の高い整備工場を選べば良いだけです。
売り手市場の現在ならば、案外、今よりも高い給料の求人情報が案外見つかるかもしれません。
いろいろ考えるよりも、実際に無料の転職サイトで、一度求人情報を検索してみるのが一番です。
整備士の待遇が改善されている!?
自動車整備業界では、整備士の人材不足が顕著になってきており、その影響か、近年整備士の給与・待遇が他の業界に比べて飛躍的に良くなってきているというデータがあります。将来的にも待遇改善の方向に向かっていく可能性が高く、整備士の転職・再就職のハードルはそれほど高くありません。
民間整備工場の仕事内容

民間認証工場で最も多い仕事は車検整備
もちろん車検はディーラーでも多いですが、車検以外の仕事がディーラーに比べて少ないので、割合的に車検が多いです。
認証工場とディーラーの仕事内容についての比較表をまとめてみました。
それぞれの仕事が全体に占める割合の目安です。あくまでもイメージですが参考にしてください。
民間認証工場 | ディーラー | |
車検整備 | 80% | 35% |
一般整備 | 15% | 20% |
定期点検 | 4% | 25% |
部用品取り付け (新車整備含む) | 1% | 10% |
保証整備 | 0% | 10% |
ディーラーに比べて民間の整備工場は、定期点検・部用品取り付け・保証整備が圧倒的に少ない傾向にあります。
もしあなたが民間の認証整備工場に転職した場合、毎日の仕事は「車検整備」となる可能性が高いです。
車検整備や一般整備については、ディーラーでの仕事のやり方とさほど変わりません。
自動車メーカーからの情報はあまり期待できないので、汎用のスキャンツールとファイネスを使って故障修理などをします。
修理に困ってしまえば、ディーラーに外注するという方法がありますので、その点では、ディーラー整備士のように「修理できなくて眠れないほど精神的につらくなる」ようなことはそれほどありません。
持ち込み検査
指定を持たない認証工場では、車検の仕事は、国の検査場で持ち込み検査を受けることとなります。
ディーラー整備士の中には持ち込み検査をしたことがない人もたくさんいると思いますが、その点は2度3度持ち込み検査を受ければすぐ慣れてしまうので、まったく心配いりません。
また、検査場まで遠い地区の認証工場では、持ち込み検査を受けるための移動が負担になってくることもありますが、逆に整備士の休憩時間になっていることも多く、「持ち込み検査に行くための移動の時間で一息つけるので、今の仕事を続けられる」と言う整備士の人もたくさんいます。
民間整備工場の取扱車種

取扱車種が多岐にわたる
この点は、民間整備工場の大きな特徴です。
民間整備工場は全ての国産メーカーの車はもちろんのこと、輸入車からバイク、トラック・バスなどを取り扱う可ことが多く、特に小型自動車系ディーラーからの転職の場合には、かなり戸惑うかもしれません。
また、工場によって取扱車種がかなり違います。大型車や重機がメインの工場も多いです。
しかし、取扱車種が増えたと言ってもそれほど心配いりません。ディーラーでの経験が必ず役に立ちます。慣れるのは時間の問題です。
さらに、板金工場を持っている工場もあり、その場合ボデーの磨き作業などの軽作業を手伝ったりする機会がありそうです。
ここまで簡単にまとめると、民間認証工場での仕事はディーラーでの仕事と比べて、次のようなことが言えるでしょう。
- 車検整備が仕事の主体になる
- 認証工場の場合持ち込み検査がある
- 取扱車種が多い
民間整備工場の勤務時間

朝8時30分出勤、夕方5時まで勤務。このあたりが多いです。
認証工場の出勤時間はディーラーよりも早い傾向にあります。理由は国の検査場の開始時間が関係しています。
認証工場は持ち込み検査に行きますので、早い時間の検査に間に合うように出勤時間が早いのです。
一方で、退社時間はディーラーよりも圧倒的に早い傾向にあります。
もちろん残業もあるところはありますが、連日の残業をしている工場は少ないです。
残業が少ない理由はいろんな要素がありますが、ひとつの理由として「客層」が大きく関係しているように思えます。
認証工場は地元密着型の会社が多く、そのお客様は
- 社長、社員の友人・知人
- 昔からのお客様
- 家が近くのお客様
が多く、ディーラーよりも人と人とのつながりで成り立っている傾向にあります。地方の小さい整備工場ではこの傾向がより強いですね。
つまり、ある程度融通がきくお客様が多いのです。
「絶対に今日中に納車しなければならないお客様」や「無理を言うお客様」がディーラーに比べて少なく、無理して残業しなければならないケースが少ないです。
さらに、ディーラー特有の「工場の仕事が終わってからの仕事」がほとんど無いことや、「厳しい売上ノルマが無い」、「急なお客様が少ない」ことなども退社時間が早い理由になっています。
民間の整備工場では「5時ぴったりで退社する」ことも夢ではありません。この点はディーラーに比べて大きな魅力です。
民間整備工場の休日
認証工場の場合では、日曜・祝日は休み
理由は明確、国の検査場が休みだからです。
つまり、国のカレンダーの通りに休日がある工場が多いと思います。
その他、土曜日も隔週で休みになる認証工場があり、おそらくほとんどのディーラーよりも休みは多い傾向にあると思います。
民間整備工場の長期休暇

基本的に国のカレンダーと同じになるのですが、お盆と正月についてはやはり数日間休みが多くなり、長期休暇となります。お盆も正月も1週間程度休む工場が多いようです。
しかし長期休暇の長さについては、ディーラーの方が長いところが多いです。
一気にたくさん休むのがディーラー、公務員と同等に休むのが認証工場といったでしょうか。
関連記事>>>整備士の転職・退職理由TOP5に業界の深い闇/「整備士やめとけ」は正論か!?
転職活動のトレンド
「転職エージェント・サービス」を利用する人が急増
転職エージェント・サービスはあなたに担当者がついて、より細かく転職のサポートしてくれるのが特徴のサービスで、近年利用者が急増しています。
会員登録が無料、実際に転職に成功したとしても無料で利用できることから、日本では、業界を問わず、転職を考える多くの人が利用しています。
転職活動は、希望者が企業の求人案内を眺める時代から、転職エージェントを利用して、企業から好条件のオファーを待ったり、交渉してくる時代に変わってきていますね。
転職エージェント・サービスの中でも、知名度が高く、転職支援実績が高い大手サイトがマイナビエージェントです。
さらにマイナビエージェントでは、整備士が転職しやすいエンジニアに特化したサービスも展開しています。
>>>マイナビエージェント(エンジニア特化型エージェント
まとめ
民間の認証工場とディーラーの違いについて表にまとめてみました。
民間認証工場 | ディーラー | |
仕事内容 | 車検が主体、持ち込み検査 | 車検整以外の仕事も多い |
給与 | ディーラーより低め | 民間より高め |
勤務時間 | 8時30分~17時 | 9時30分~19時以降 |
休日 | 日曜日、祝日+(土曜日) | 月曜日、火曜日等の平日 |
長期休暇 | 公務員と同等 | GW、夏季休暇長い |
ディーラーに勤める整備士が「辞めたい」と思う大きな理由の一つとして、「ディーラーは土日が休めない事と、帰宅時間が遅い事」というのが挙げられます。
特に家庭や子供を持つと、やはり一般の人と同じように土日に休みたいと思う人が多くなります。
子供の様々な行事に参加できないことは、やはり父親としてはとても辛く、20代後半から30代の父親整備士については、そこが原因で転職する人がもっとも多いと言われています。
>>>整備士の転職・退職理由TOP5に業界の深い闇/「整備士やめとけ」は正論か!?
しかし、民間の整備工場に再就職し、給与が減ってしまう点については不安に思う人も多いため、ディーラーで給与を選ぶか、民間整備工場で休みを選ぶかのような構図となっているのかもしれません。
しかし、何度も言いますが、自動車整備業界全体では人手不足により、賃金は上がる傾向にあり、待遇改善の流れにあります。
また、転職サイトをひとたび開いて検索すると、自動車整備士の求人はとても多く、その中から自分に会う場所を探すことができます。完全なる売り手市場です。
少しでも再就職について考えるのであれば、ぜひ転職サイトでどの程度の求人がどのようなところから出ているのかを検索してみてください。時間もお金も掛けずに今すぐできて、登録するだけならなんのリスクもありません。そこが転職成功への第一歩目です。
以上、民間の整備工場の給料・仕事内容・勤務時間・休日についてでした。最後までありがとうございました。