エコアイドルランプが点滅する不具合は、ダイハツのアイドリングストップ車にとても多い不具合です。
この記事では、一級自動車整備士の管理人が、実際に同じ不具合が出ているタントの点検した結果を元に、原因や対応方法を解説します。
- ダイハツ車のエコアイドルランプ点灯の原因、対応方法がわかります。
この記事を書いた人:きりん
元ディーラーの一級整備士で整備士ねっと管理人です。自動車整備業界に長く携わり、現在は整備業界のコンサルなども行っています。twitterでたくさんの整備士さんや業界の人と繋がっているのでチェックしていただけるとうれしいです。(seibisi_net)
エコアイドルランプ点滅の原因と対応方法
- 原因:バッテリーの劣化
- 対応方法:バッテリーの交換・充電
実際にこの車を点検したところ、バッテリーの劣化が原因でエコアイドルランプが点滅していました。修理するためにはバッテリーの交換か充電が必要です。今回の車については、プロの整備士が確実な診断を実施した結果、バッテリーの劣化と判定しました。
ただし、すべての車が、必ずしもバッテリーの劣化とは限りません。
同じように、あなたの車のエコアイドルランプが点滅していたとしても、バッテリーの劣化とは限りませんので決めつけず、プロによる診断が必要です。ダイハツのエコアイドルランプは、アイドリング・ストップ・システムに何かの不具合が出ると点灯・点滅するランプです。
例えば、スタータという装置やストップランプスイッチなど、アイドリング・ストップ・システムに関連する装置に異常があると点灯・点滅するように設計されています。
プロによる正しい診断を実施しなければ「バッテリーを交換しても直らなかった」ということになりかねないので、プロの整備士に点検してもらうことが最も大事です。
ただ、可能性としてはバッテリーの劣化である可能性が最も高いです。
なので、後述の「実施した点検と結果」の内容を読んでいただき、症状が似ていて、バッテリーの交換をしばらく実施した事がないのであれば、試しにバッテリーの交換をしてみる価値は十分にあると言えます。
このまま運転するとどうなる?
- 安全には問題ありません
- アイドリング・ストップ機能が働きません
- 燃費が悪くなります
- 急にエンジンが掛からなくなる可能性があります
- ランプが消えません
なるべく早く対処したほうが良いです。このままにしていても、良いことは何一つありません。
実施した点検と結果
ここからは、私が実際に実施した点検を詳しく説明します。プロの整備士さんも参考にしてください。
エコアイドルランプ点滅の症状
ある寒い日の朝に、同僚からダイハツ・タントの修理を頼まれました。点検する前に、状況を詳しく聞いたところ次の事がわかりました。
- エンジンを始動すると、メーター内の「eco IDLE」ランプがオレンジ色に点滅
- つかない時もある
- 最近頻度が増している
- ランプ点滅中はアイドリングストップしない
- 事故・修復歴、改造無し
- バッテリーを2年間交換していないダイハツ・タント(H26年式)
あなたの車も、この症状に限りなく似ているのであれば、バッテリーに原因がある可能性がさらに高くなります。
車に乗り込んでエンジンを始動してみると、同僚が言っていた通り、メーター内のにある「eco IDLE OFF」というランプが、オレンジ色に点滅しています。
上記のインジケータが点滅する車もあります。
関連記事>>>車のメーターのランプがついた!点灯・点滅・色の意味を解説
スキャンツールで診断(DTC:P1602)
写真は「スキャンツール」とよばれる自動車整備専用のコンピュータです。
車に繋いで、車に搭載されているコンピューターと通信し、データを解析するツールです。プロの整備士が故障診断や修理するときに使います。ディーラーではもちろんですが、小さな民間の整備工場のほとんどでもスキャンツールを使用しています。
写真は、スキャンツールを使用して診断した、診断結果画面の写真です。
- エコアイドル・システムに一つの異常
- 異常の内容は、「P1602:始動時電源電圧低下異常」
と表示されています。
このP1602という故障コードが、どのような故障で、どのような原因で発生し、どうすれば修理できるのかについての詳細は、自動車メーカーが発行する「修理書」を見なければなりません。
今回の場合は、ダイハツ工業が発行している正式な修理書を参考に、P1602という故障を修理しなければならないということになります。
自動車メーカー発行の修理書は現在一般に公開されておらず、基本的には、国の認証を受けた整備工場でしか閲覧することができません。
スキャンツールでの診断結果
バッテリーが劣化している可能性がある
修理書を参考にしながらさらに詳しく故障診断をしていった結果、この車のバッテリーに不具合がある(弱い)可能性が高いと判断しました。
P1602という故障コードはバッテリーに不具合がある場合に出力する故障コードでした。
ということで、本当にバッテリーが弱いかどうかをバッテリーテスターで点検してみます(写真)。
写真の白いプリント用紙がバッテリーのテスト結果ですが、写真下部に
- 充電量(SOC):74%
- 健全性(SOH):55%
と、プリントされている通り、充電量、健全性が共に低い値になっています。
「間違いなく原因はバッテリーの劣化、交換すれば直る」と判断して、診断終了です。
不具合内容の解説
問診や診断結果から、今回の不具合を解説します。
- 冬になり寒くなりました
- 車は、自らのバッテリーが弱くなっていると判断しました
- 車は、アイドリングストップを実施しないことにしました
- (アイドリングストップ後のクランキング(エンジン始動)が、さらにバッテリーの寿命を縮めてしまうと判断したため)
- 車は、「eco IDLE OFF インジケータ」を点滅させて、あなたに修理(バッテリー交換)をうながしました
これが、一連のストーリーです。現在の車は頭が良いです。
ということで、同僚のタントはバッテリーを新しいものに交換し、それ以降不具合は出ていません。
装着したバッテリー
パナソニック:カオス
今回装着したバッテリーはこちらです。ダイハツのアイドリングストップ車の全てに適合します。私ならこれ一択です。
これをおすすめする理由はこちらの記事で詳しく説明しています。
>>>M42バッテリーのおすすめはたった一つです/ダイハツ・スズキなどに適合
バッテリーを交換するか充電するか
基本的には「交換」がいい
バッテリーが劣化している場合、充電して復活させる方法があります。整備工場で充電可能です。
ただし、新品バッテリーの価格、充電作業の料金(工賃)、修理の確実性などを考えると、充電の選択肢はなく、新品に交換するのが最もよい方法です。
詳しい理由などは、こちらの記事に詳しく書いているので参考にしてください。
>>>自動車のバッテリーは充電で復活するか!【健全性(SOH)がポイント】
バッテリーの寿命
車種や使用環境によって大きく変わる
歯切れが悪いですが、この通りです。実際、使用している環境によっては、1年でダメになる場合も、5年以上使用できる場合も普通にあります。ここは理解して欲しいところです。
経験上、ダイハツのアイドリングストップに関しては平均(目安)は、2〜4年程度でしょうか(私個人の肌感)。また、今回診断した、同僚のタントのバッテリーは、2年でダメになりました。
※1年や2年で、バッテリーがダメになるなんて「納得いかない」と思う方は、ページ下の「さらに解説」を読んでください。私個人の元ディーラー整備士としての正直な見解を書きました。
バッテリーの保証
バッテリーの劣化は、保証の対象にならない
いくら新しい車でも、バッテリーの劣化(容量低下)は自動車メーカーの保証の対象になりません。1年でも半年でダメになっても同じです。
詳しく知りたい人は下記の記事をお読みください。
アイドリングストップ車/バッテリーの注意点
注意すること→ありません
Webサイト上には、「アイドリングストップ車はバッテリーに要注意」「なるべく負担を掛けない」「エアコンをつけると弱くなる」などの情報が多く見受けられます。しかし、決してそんなことはありません。
バッテリーのことを注意しながら乗らなければならない車なんて、商品性が悪いとしか言えません。あなたが注意しなければならないことは何もありません。普通に乗るだけです。
詳しくはこちらに書きました。
>>>バッテリーに要注意!?アイドリングストップ車で気をつけること
まとめ
整備工場でプロによる点検を
アイドリングストップランプが点滅した場合は、早めに整備工場に持ち込み、しっかり点検・修理してもらいましょう。
そのまま乗り続けると、急にエンジンが指導しなくなる可能性があります。また、ランプ点滅時はアイドリングストップしないため、燃費の悪化に繋がります。
バッテリーに原因がある可能性が高いです
上述したタントと症状が似ていて、2年以上バッテリーを交換していなければ、バッテリーが原因である可能性はかなり高くなります。
思い切って交換してみるのも一つの手です。
関連記事まとめ
更に解説
今回の診断では、新車で購入してからたった2年での「バッテリー劣化」となりました。
相談者の話をよく聞きましたが、毎日通勤で5km以上の距離を運転しており、それほどバッテリーにとって厳しい条件ではないように思いました。
もし、この先も全く同じ環境で使用すれば、10年乗り続けるのにバッテリーが5個必要です。さらに、バッテリーはアイドリングストップ専用なので、通常のタイプのバッテリーより高価です。
「アイドリングストップ機構付きの車だから、バッテリーの寿命が短いのはしょうがない」とディーラーさんあたりで言われそうですが、私が診断して感じるのは、「バッテリーの劣化が早いのではなくて、コンピュータがバッテリーの劣化判断する条件(しきい値)が厳しすぎるのでは」ということです。
つまり、バッテリーはまだ交換が必要なほど弱くなってないのに、限界の判定をしているのではないかということです。
最後の写真のバッテリーテスター結果もプリント用紙をよく見てください。実は、バッテリーテスターは容量が低下しているとしながらも、結果は良好と判断しています。
私が使用している写真のバッテリーテスターは実は辛口(ちょっとだけ弱いバッテリーをダメと判断する)として有名なテスターですが、それよりもダイハツの条件が厳しいことになります。(つまり、ダイハツはすぐバッテリーが弱いと判断するという意味)
さらに、このようにバッテリー劣化を判断した場合、車はメーターのインジケータを点滅させます。
ランプが点灯するくらいであれば、「見て見ぬふりをしてもうしばらく乗ろうかな」などと思うのですが、点滅はわずらわしいこと、この上ないです。
メーカーはアイドリングストップ車の共通の心配事である「走行中のバッテリ上がり」が起きてしまうことを恐れるがあまり、「念のため・・・念のため・・・」と言いながら、バッテリーの劣化判定をだいぶ厳しい値にしてしまったのではないか・・・。
というのがわたしの今回の診断における率直な感想です。
しかし、こんな話をディーラーさんや整備工場にしても不毛ですのであしからず・・・。あくまでも個人的な見解です。
以上、ダイハツ・エコアイドルランプの点滅についてでした。最後までありがとうございました。