- 雪道の運転が怖い
- 雪道を運転したくない
程度は人によって違いますが、このような不安を持っている人は多くいます。
長年北海道や東北地方に住む人であっても、みんな同じ不安を持っています。わたしは雪国に住む整備士ですが、やはり怖いときは怖く、なるべくなら積雪時や凍結時には運転したくありません。
しかし、雪道運転のコツを知り実践することで、事故に合う可能性をある程度低くでき、怖さや不安を抑えることは可能です。
この記事では、雪上路、アイスバーン(凍結路面)での運転のコツや、スタッドレス・タイヤの性能、車の性能による違いなどについて、長く積雪地に住む一級整備士の管理人が解説します。
あなたの雪道運転の不安が少しでも解消され、大切な人との冬のドライブが楽しいものになるように願います。
この記事を書いた人:きりん
元ディーラーの一級整備士で整備士ねっと管理人です。自動車整備業界に長く携わり、現在は整備業界のコンサルなども行っています。twitterでたくさんの整備士さんや業界の人と繋がっているのでチェックしていただけるとうれしいです。(seibisi_net)
滑る・滑らないを決める3つの要素
- 運転技術(運転のコツ)
- スタッドレスタイヤの性能
- 車が持つ性能
雪道で車が滑るかどうかの最も大きな要素は道路状況です。しかし道路状況は自分の力では変えられないので、道路状況を除いて、あなたが対応できそうな要素は上記の3つです。
この3つの要素を向上させることで、道路状況に寄らず、車は滑りにくくなっていきます。
事故や不安はお金で解決できる!?
要素 | 重要度(効果) | お金で解決できる |
---|---|---|
1.運転技術(運転のコツ) | ✕ | ✕ |
2.スタッドレス・タイヤの性能 | ◯ | ◯ |
3.車が持つ性能 | ◎ | ◯ |
雪道で滑る・滑らないの3つの要素を、重要度が高い順に並べると、車の性能→タイヤの性能→運転技術です。
運転技術は奥が深いので、それ以外の要素を超えられる可能性がありますが、一般の方にはやはり限界があるので、この順番で考えるのが妥当です。
そして、車の性能とタイヤの性能はお金で解決できますが、運転技術はお金では解決できません。
このように考えると、事故や不安をなくすために、初めからお金で解決する方法が考えられます。運転技術を磨くよりも効率が良いので、当然考えるべきです。
一方で、運転技術はお金をかけずに今すぐ実践できるので、即効性があり、実践して損をすることはなく、リスクがありません。いずれにしてもコツを知っているに越したことはないですね。
それではこの3つの要素について説明します。
1.運転技術(運転のコツ)
- ゆっくり走る
- 車間距離を長く取る
- やさしくブレーキペダルを踏む
上記の3つは基本です。この3つだけで防げる事故は数多いです。多くの人がわかりきっていることだと思います。
そして、これを基本として、その他に下記3つの運転のコツがあります。
- ブレーキを数回に分けて踏む
- エンジンブレーキを使う
- ハンドルを切りながらブレーキを踏まない
1.ブレーキを数回に分けて踏む
ペダルを踏み込み、ブレーキがきいたらペダルを離し、もう一度ブレーキを踏み直す
これを繰り返すのが、ポンピングブレーキというテクニックで、ブレーキのロックを防ぎます。
現在の車にはABSという安全装置がついていて、ブレーキのロックを検出すると自動的にブレーキ力を抑制します。
ABSが装備されている車では、ポンピングブレーキは必要ないという見方もありますが、ABSが作動すれば恐怖を味わうことも多く、できればABSを全く作動させないで運転することが理想的です。
そのためには、そもそもブレーキをロックさせない運転が必要で、やさしく数回に分けてブレーキを踏むことで、ブレーキのロックを防ぐことができます。
急ブレーキを使わず、優しくゆっくりペダルを踏み込むことと同じような意味で効果があります。
ただし、衝突が避けられないと感じた場合や、交差点に侵入してしまいそうな場合などの緊急時には、ペダルを数回に分けて踏むことはせず、ブレーキペダルを強く踏み抜いてください。ABSが作動し被害を最小限にできます。
タイヤのロックとは
タイヤが回っていない状態で、「ツーっ」と滑っていくこと
車が滑っている時、滑ると感じる時というのは、タイヤがロックしている時です。タイヤのロックが起きると、ブレーキの効果が薄れ、制動距離が著しく伸びてしまいます。
雪道で滑らないようにするためには、とにかくタイヤをロックさせないことが重要です。
2.エンジンブレーキを使う
減速時に、シフト(ギヤ)を「D」から1段下げて減速すること
この操作を行うと、ブレーキを踏まなくても、ある程度、車を減速させることができます。ブレーキのロックを防ぐ安全な減速方法です。
しかし、この操作をするとエンジンの音が大きくなり不安になる人も多く、使わない人が多いようです。「Dの下の段」を一度も使ったことが無い人もいると思います。
「Dの下の段」は、主に下り坂でスピードが出すぎる時などに使用するためのもので、スピードを抑制するのに有効です。積極的に使用して下さい。
ただし、エンジンブレーキはブレーキペダルを踏む前の、初期段階でのスピードを抑えるために使用し、しっかり停止させるためには、その後ブレーキを踏む必要があります。
1.シフトを下げる→2.ブレーキを踏む
この順番で操作することで効果が高まります。
エンジンブレーキの掛け方
「D」で走行中に、シフトレバーを1段引く(下げる)
このときブレーキペダルを踏む必要はありません。そのまま「ガツン」と引きます。ハイブリッド車などは、シフトの入れ方がわかりにくい場合があるので確認してください。
使ったことがない人は、普段の運転で練習し、雪道でも操作できるように慣れる必要があります。
はじめは車の挙動の変化に驚くかもしれませんが、車が壊れたり、危険はないので安心して操作してください。
3.ハンドルを切りながらブレーキを踏まない
タイヤのロックや、車が不安定な状態になるのを防ぎます
モータースポーツのプロドライバーも基本的には直線でブレーキペダルを踏んで、コーナーではブレーキを踏みません。車が横に流れたり、車の向きが大きく変わるなど、車が不安定な状態になり危険だからです。
普段運転していると、カーブや交差点で曲がりながらブレーキを多用する人がいます。スピードが遅ければそれほど問題にはなりませんが、雪道では事故に直結します。
また、乾燥路面でもタイヤに負担がかかり、摩耗がすすんでしまい良いことはありません。無意識でそうなっている人が多いので、意識して曲がりながらブレーキを踏まないようにしましょう。
2.スタッドレスタイヤの性能
スタッドレス・タイヤの効果は高く、性能次第で、滑るかどうかが大きく変わる
運転のコツを覚えるよりも効果が高いと言えるのが、性能が高いスタッドレス・タイヤを装着することです。全ての状況下で滑りにくくなります。逆に、性能の良くないスタッドレス・タイヤは全ての状況下で滑りやすいです。スタッドレス・タイヤの効果は高いです。
新品のスタッドレスタイヤが最も性能が高く、走行距離が伸びたり、年数が経ってくると徐々に性能が落ちてきて、新品時よりも滑りやすくなってきます。
北海道や東北地方では、スタッドレス・タイヤを3~5年程度で新品に交換する人が最も多いですが、例えばその5年間はずっと性能が高い訳ではなく、5年目のタイヤは新品に比べるとかなり性能が落ちています。
また、そもそもメーカーや銘柄によって性能差があります。スタッドレスタイヤの性能の違いに関してはここでは説明しませんが、基本的に価格の高いスタッドレスは性能が良いと考えていいです。
性能の良いスタッドレス・タイヤの価値
雪道の運転が怖い、運転したくないという不安を強く持つ人は、なるべく良いスタッドレス・タイヤを短いサイクルで交換するべきです。
具体的には3年程度で交換していくことです。もちろんその分費用はかかりますが、事故を起こせばそれ以上に高い代償を払うことになります。不安や怖さもある程度払拭できます。
私の経験では、実際に、2~3年サイクルで交換する人もけっこういます。話を聞くと、過去に雪道で怖い思いをしたことがある方が多かったです。もちろんそういう人は、大抵高価なスタッドレスタイヤを購入する傾向があります。
「新品で性能の良いスタッドレス・タイヤを装着しているから大丈夫」という安心感を持って運転することと、「安くて古いスタッドレス・タイヤを装着しているから大丈夫だろうか」という不安を持って運転することでは、精神的に雲泥の差があるはずです。
言い方を換えると、雪道の事故や不安の払拭は、ある程度はスタッドレス・タイヤでなんとかできる、つまりお金でなんとかできると言えます。
雪道でのブレーキ時「ガガガ」
これはABSが作動した時の車の挙動で、車の異常・故障ではありません。
「雪道でのブレーキ時に「ガガガ」「ゴゴゴ」「ガリガリガリ」という音や振動がブレーキペダルにあり、車が止まらない」
整備士の頃、お客様からのこのような相談が数多くありますが、このように感じる場合はほぼ間違いなくABSの作動だと思います。
初めて経験した人は、口を揃えて「びっくりした」と言い、同時に「ブレーキが効かなかった」とも言います。
ABSはどこかのタイヤがロックした場合に、該当する車輪のブレーキ力を弱めるなどして、安全を守る役割をする装置ですが、ドライバーには違和感や止まらないという感覚が残ります。
ABSが作動するということは、ABSが装備されていない車だったらスリップしているということになり、危険な状態になったということです。
ABSが頻繁に作動する場合は、タイヤの性能が低い可能性が高く、スタッドレス・タイヤを性能の良いものに交換すると、改善される場合が多いので、交換を検討してください。
>>>タイヤのネット購入で失敗しないコツと方法【プロの整備士が伝授します】
3.車が持つ性能
4WD車、高級車は滑りにくい
運転のコツを覚えるより、性能の高いスタッドレス・タイヤを装着するよりも、滑るか滑らないかの大きな要因になるのが、車自体が持っている性能です。
メーカーや車種によって、滑るか滑らないかが大きく変わり、雪道に強い・強くない車があります。
経験上、雪道での事故が少ない車種は存在し、「〇〇という車は事故が少ないなあ」と感じるときが多くあります。
- 4WD車、高級車→滑りにくい
- 軽自動車、小型車→滑りやすい
最新の車体制御システム(4WD、AWD、VSC、TRC等)が搭載されている車種は明らかにすべりにくく、比較的価格の高い車種に搭載されています。
「新しい車に交換したら、雪道が怖くなくなった」という話はよくある話で、軽自動車に乗っていた私の母親がSUVに乗り換えた時に「ぜんぜん違う、不安がない」と言っていたのを思い出します。
それくらい、車が持つ性能で違うということです。
とはいえ、そう簡単に車を新しくすることはできないと思いますので、頭に入れておいて、新しい車を購入する際に検討しましょう。
「雪道の運転が怖い」という思いが強い人は、滑りにくい車(4WD、高級車)を選ぶべきです。あっさり解決する場合があります。
雪道への備えで不安をやわらげる
雪道での運転が怖い、運転したくないと思う原因の一つに、「事故を起こしたらどうしよう」という不安があります。
なので、「万が一事故が起きても大丈夫」と思えるような備えをしたり、確認をすることで、精神的に気が楽になります。
具体的には次のような備えをしてください。
- 事故時の対応をシミュレーション
- 自動車保険内容の確認・充実
- タイヤチェーンの携帯
- 手袋・防寒具などの携帯
- 飲み物・食料などの携帯
1.事故時の対応をシミュレーション
救急→警察→安全確保→レッカー→整備工場→保険会社
このように、事故時にあなたが行う対応の流れをシミュレーションし、実践できるようにイメージしておきましょう。
例えば、JAFやレッカー連絡先の確認・メモ・スマホへの電話帳登録、保険証券を車検証ケースに入れるなど、緊急時の対応を想定しておくと実際の緊急時にパニックにならず速やかに適切な対応が取れます。精神的な不安も少し軽減されると思います。
2.自動車保険内容の確認・充実
保険内容を確認し、車両保険に入る
雪道でスリップによる自損事故への備えとして、車両保険に入りましょう。
車両保険は安くはないですが、事故を起こしたときの経済的な負担に対する不安を大きく軽減できます。
また、その他の補償内容も確認し、足りないと感じる部分は補充しましょう。現在の保険には、無料レッカーサービス、旅先での宿泊に対する補償、自宅までの交通費など、いろいろな補償があります。
また保険料金は「通販型自動車保険」にすることで、かなり節約できます。場合によっては数万円の保険料金を抑えることができます。
保険の内容について気になった人は、内容を確認するとともに「通販型自動車保険」で現在の保険料や補償内容と比較して、あらためて検討することをおすすめします。
通販型にはデメリットもありますので、よく検討して下さい。
こちらのサイトでは、一度の入力で、複数の自動車保険会社の見積もりを受け取ることが可能です。
3.JAFなどのレッカー対応の確認
どこのレッカーを利用するのかを事前に確認する
事故であなたの車が自走できなくなってしまった場合、レッカーサービスを利用することになります。そして、どこのレッカーサービスを利用するかはあなたが決めることです。
もし、決まったところがない場合は、警察や保険会社の斡旋になります。
現在は、ご自身が加入する保険会社の無料レッカーサービスを利用する人が増えていますが、移動できる距離が短い、来るのが遅いことがある、などのデメリットがあります。
JAFは24時間365日対応可能で、早く確実にレッカー作業ができ、安心のサービスですが、料金が高い傾向にあります。
ただし、JAF会員になっていれば費用を大きく抑えることができるため、保険のように加入している人も多いですね。
整備工場のレッカーは、事故を起こした場所が遠い場所だと対応できない可能性が高いので、他のレッカーも考えておくべきです。
>>>JAF個人会員
4.タイヤチェーンの携帯
車がスリップして坂が登れない、雪が深くて立ち往生などの緊急時に、タイヤチェーンは効果的です。
タイヤチェーンは比較的軽量でコンパクトなので、常に車のトランクに携帯することが可能で、いざという時の備えになります。
また、豪雪時に一部国道や高速道路などで規制される「チェーン規制(チェーンが無いと走行できない規制)」にも対応できるので、タイヤチェーンを携帯する人が増えています。
タイヤチェーンは数千円~2万円程度で購入可能なので、携帯することを検討しましょう。
おすすめのタイヤチェーン
今はジャラジャラする金属のチェーンよりも、価格は高いですが、乗り心地や静音性の高い非金属のチェーンが人気です。
こちらは、信頼性のある定番チェーンです。迷うならこれが無難です。下記で料金を確認して下さい。
※タイヤチェーンにはサイズがあります。あなたのお車のタイヤサイズに合うものを購入してください。
関連記事>>>【整備士解説】チェーンがあればスタッドレスはいらない!?/本当はどっちがいいのかの疑問に答えます
5.手袋・防寒具などの携帯
冬季の車のトラブル時に手袋や防寒具はとても大事です。猛吹雪の中、車外でレスキューを待ったり、作業する場面では必須です。
その他にも、あると便利な場面は多く、車に入れておいてもそれほど邪魔にはならないので、携帯することをおすすめします。
ちなみに私は袋に入ったユニクロのダウンを携帯しています。
6.飲み物・食料などの携帯
近年幹線道路での立ち往生が多く発生しています。
立ち往生は、大雪が降っている時に、前方の車が事故や、雪の影響で走行不能になることが原因で発生します。これは自分ではどうしようもなく起きてしまうので、運が悪いとしか言いようがありません。
過去の例では最大で2日間道路上で過ごすようなことも起きており、特に水の携帯は今は必須です。
その他、震災や大雨など何が起きてもおかしくない世の中なので、水や食料、簡易トイレや防寒具などを携帯することで、非常時ばかりか精神的にも安心できるのでおすすめです。
まとめ
雪道の運転方法にはコツがあり、実践することで、ある程度事故のリスクや怖さを少なくすることができます。
また、雪道で運転した場合に滑りやすいか滑りにくいかは、運転のコツ、スタッドレスタイヤの性能、車の性能によって変わります。
その中でも、スタッドレス・タイヤの性能に関しては、比較的少ない費用で改善できるので、運転のコツを覚えるよりも、現実的かもしれません。
スタッドレス・タイヤの効果は高いです。
さらに、雪道でのトラブルに対する備えをすることで、「事故を起こしてしまってもなんとかなる」という精神的な支えになりますのでおすすめです。
以上、雪道運転のコツ、怖い・運転したくないを克服する方法でした。