普段雪の降らない地域に住む人は、雪道を運転する予定がある場合にチェーンとスタッドレス・タイヤのどちらを買うべきか悩む人が多いです。
結論から言うと、チェーンとスタッドレス・タイヤは特徴が異なるため、どっちがいいのかは状況によって変わります。あなたに合う選択をするには、チェーンとスタッドレス・タイヤの特徴を少し理解する必要があります。
この記事では、チェーンとスタッドレス・タイヤについて、積雪地に住む一級整備士の管理人が詳しく解説します。
この記事を読んで、あなたやあなたの大切な人が、安全で、楽しい冬のドライブをすることができれば幸いです。
この記事を書いた人:きりん
元ディーラーの一級整備士で整備士ねっと管理人です。自動車整備業界に長く携わり、現在は整備業界のコンサルなども行っています。X(旧twitter)でたくさんの整備士さんや業界の人と繋がっています。(seibisi_net)
チェーンがあればスタッドレスはいらないのか
多くの場合で、チェーンがあってもスタッドレスタイヤは必要です
チェーンは降雪や道路の凍結による走行不能を助けるもので、スタッドレス・タイヤは降雪や凍結路面を安全に走行するためのものです。用途に違いがあります。
別の言い方をすると、走行不能になってしまったとき(緊急時)に対応するものがチェーンで、普段の雪道走行・長距離走行に対応するものがスタッドレス・タイヤです。
また、ノーマルタイヤにチェーンを装着するよりも、スタッドレス・タイヤにチェーンを併用する方が断然、雪道の走破性が高いので、チェーンがあればスタッドレス・タイヤはいらないとはなりません。
その逆に、豪雪の場合には、スタッドレス・タイヤでも走行不能になることがありますので、スタッドレス・タイヤがあればチェーンがいらないともならないです。
チェーンは緊急時の備え、スタッドレス・タイヤは安全走行の道具と考えましょう。
また、どちらかを用意すればいいのか、両方用意したほうがいいのかについては、状況によって異なります。この記事を読み進めると答えがあります。
チェーンとスタッドレス・タイヤのどっちを選べばいいのか
- チェーンは、万が一の備え
- スタッドレス・タイヤは、予定された雪道運転
ある程度、雪道を運転することが予測できる場合には、スタッドレス・タイヤを選びます。長い距離や時間をチェーンで走行するのは、安全面、乗り心地から考えて良くありません。
冬の東北地方往復、一泊二日のスキー旅行などではいずれもスタッドレス・タイヤを選んでください。
チェーンは、「普段雪の降らない地域での突然の大雪などで、家まで車で帰らなければならない」「高速道路を走行中、突然の冬タイヤ規制」などの緊急事態で使用するのが一般的です。冬タイヤ規制については後述します。
積雪地ではチェーンを見かけない!?
東北・北陸地方などの普段から雪の降る地方では、乗用車でチェーンを使用している車をあまり見かけることはありません。雪が降ることが前提となっている地域では、ほぼ100%スタッドレス・タイヤを装着しています。
チェーンとスタッドレス・タイヤの違い・比較
比較表
スタッドレス | チェーン | |
---|---|---|
価格 | ✕ | ◯ |
氷上性能 | ◯ | ◯ |
雪上性能 | ◯ | ◯ |
取り付け | ✕ | ◯ (路上で可) |
利便性 | ◯ (付けたらそのまま) | ✕ (こまめに脱着) |
乗り心地 | ◯ | ✕ |
走行音 | ◯ | ✕ |
走行スピード | ◯ (100km/h以上可) | ✕ (50km/h程度まで) |
耐久性 | ◯ | ✕ (切れるリスク) |
乾燥路面適正 | ◯ | ✕ |
保管・携帯 | ✕ | ◯ (持ち運び可) |
装着するタイヤ | 4本全て | 2本 |
燃費 | ▲ | ✕ |
表を見ると、スタッドレス・タイヤの良さが目立ちますが、チェーンはコンパクトで、常に車に入れておくことが可能なことや、道路上で比較的簡単に装着できるので、緊急用には適しています。
東北地方の山間部の道路では、今もチェーン装着所というスペースが設けられている場所があり、時々トラックのドライバーさんが装着している姿を見かけます。
チェーンはかなり昔からあったもので、昔は雪国の人でもノーマルタイヤにチェーンを装着して走行していましたが、雪道走破性の高いスパイクタイヤやスタッドレス・タイヤの登場により、一般的にチェーンは使用されなくなりました。
現在雪国に住む人達は基本的にスタッドレス・タイヤを使用し、チェーンは使わないばかりか、持ってない人の方が多いです。表の通りチェーンは普段使いには適さない面が多いからです。
一方で、普段雪の降らない地域の人や、長距離を移動するトラックなどの緊急用には現在も使用されています。
基本的にスタッドレス・タイヤがいい
スタッドレス・タイヤには下記のデメリットがありますが、これを許容すると、他はチェーンよりも良いところばかりです。
- 価格が高いこと
- 保管場所が必要なこと
- 交換が面倒なこと
ただし、スタッドレス・タイヤは経済的な負担が大きいので、普段は雪の降らない地域に住む人にとっては、悩ましいところです。
スタッドレス・タイヤは価格が高い
- スタッドレスは夏用より高価
- タイヤとホイールが必要
スタッドレスタイヤは、夏用のタイヤ(ノーマルタイヤ)より高く、1.5倍程度の価格で販売されます。大きな車では、4本で10万円以上することも多いです。
さらに、多くの人が、スタッドレス・タイヤとホイールをセットで交換しますので、タイヤとは別にアルミホイールも準備しなければならず、その分の費用が掛かります。
タイヤだけを買って、ノーマルタイヤのホイールにスタッドレス・タイヤを装着しても良いのですが、履き替えする費用や手間が掛るため、多くの人がホイールも購入して、冬タイヤのセットを準備します。数年間維持すると、冬と春にいちいち履き替えするよりも、ホイールも買ったほうが安くなります。
スタッドレス・タイヤとホイールのセットで新品を購入する場合、サイズによっては、7~20万円以上の費用が掛かります。
チェーンの場合は、5千円~2万円程度で購入が可能なので、スタッドレス・タイヤはチェーンに比べるとかなり高いと言えます。
また、スタッドレス・タイヤは、溝が残っていても、3~5年で著しく性能が落ちてしまうので、走行距離にかかわらず定期的な交換が必要です。
スタッドレス・タイヤは保管が大変
スタッドレス・タイヤをホイールとセットで購入すると、1台につき4本のタイヤを常に保管しなければならないことになります。特に賃貸住宅に住む人にとっては、タイヤの保管はとても大変な問題ですね。
また、保管方法によってスタッドレス・タイヤの寿命に大きく影響してしまいます。
チェーンの乗り心地の悪さ
チェーンを装着した状態で走行すると、激しい振動、走行音になり、社内の快適性が著しく損なわれます。
スピードを出せば出すほど悪化したり、そもそも怖くなってくるので、チェーンを装着した状態で50km/h以上のスピードを出すことは難しいです。
スタッドレス・タイヤも多少うるさくはなりますが、特に金属チェーンで乾燥路面を走ったときのジャラジャラという走行音と乗り心地は、スタッドレス・タイヤのそれとは、全く比にならない程の不快感・ストレスになります。
高級車ではある程度軽減されますが、逆に小型トラックや軽自動車などでは、さらに悪い乗り心地になります。しかし、チェーンの種類によっても大きく変わり、近年非金属でできたチェーンが登場していて、快適性能を大きく向上しています。
乗り心地は次の要素によって大きく左右されます。
- その車がもともと持っている快適性能
- チェーンの種類や性能
チェーンは路上で取り付けなければならない
チェーンは必要な時に取り付け、必要なくなったらすぐに取り外すものです。
常に付けていると表の通り弊害が多いからですね。当然、寒い路上でその都度取り付け・取り外しをするシーンが出てきます。
楽しい旅行やドライブで、中の人を待たせながらの取り付け・取り外し作業は、あまり良いものではありません。
チェーンの燃費
著しく悪い
スタッドレスタイヤもノーマルタイヤに比べて燃費が悪いですが、チェーン装着時の燃費はスタッドレスタイヤよりも遥かに悪くなります。チェーンを装着した状態で長く走るのはなるべく避けたほうが良いでしょう。
チェーンの使用方法
前輪の左右2本のタイヤに装着する
チェーンは2本のタイヤに網状の金属や樹脂をかぶせて使います。
2本のチェーンはどのタイヤに装着してもよいわけではなく、装着するべきタイヤが決まっています。そして、多くの大衆車は前輪です。これを守らないと全く効果がありませんので十分注意して下さい。
例外的に、後輪にチェーンを装着する車両は、一部のスポーツカー、一部の本格4WD車、一部の古い車、一部の特殊な車です。該当する可能性がある場合は、販売元のメーカー、又はディーラーに問い合わせるのが無難です。取り扱い説明書に記載がある場合もあります。
また、チェーンは通常2本のタイヤに装着して使用しますので2本セットで販売されているのが普通です。
チェーンの装着方法
タイヤをジャッキアップせずに、取り外すこと無くそのままの状態で装着できます。
具体的な取付方法は購入したチェーンによって異なり、特に非金属チェーンにはいろいろな取り付け法があるようです。
説明書に書いてある通り取り付けすれば良いのですが、始めて取り付けする場合、人によっては1本で30分以上かかる場合があるので、購入したら必ず一度取り付けてみることをおすすめします。
寒い雪の中、1時間以上作業するのは本当に大変です。
チェーンの種類と特徴比較
金属チェーン | 非金属チェーン | |
---|---|---|
走行音 | ✕ | ◯ |
脱着時間 難易度 | ✕ | ◯ |
価格 | ◯ (安い) | ✕ (高い) |
走行スピード | ✕ | ◯ (金属より不安がない) |
乾燥路面 | ✕ | ◯ |
耐久性 | ✕ | ✕ |
チェーンには金属チェーンと非金属チェーンがあり、最近では非金属チェーンを使用する人が増えています。
金属チェーン
昔からある、鉄でできた金属製のチェーンです。
安価で手に入りますが、取り付けが面倒だったり、乾燥路面でジャラジャラうるさい、ホイールに傷がつく、乾燥路面で切れやすいなどのデメリットがあります。
非金属チェーン(樹脂・ゴム)
樹脂やゴムでできたチェーンです。
金属チェーンより価格が高いですが、走行音や乗り心地などの金属チェーンのデメリットを緩和しているチェーンです。最近どんどん進化していてかなり改善されているようです。
但し、総合的にスタッドレス・タイヤの方が良いことには変わりはありません。
非金属チェーン(布)
布でタイヤ全体を覆うチェーンです
取付が3分程度で可能で、軽量、コンパクトな布製チェーンです。日本ではまだ馴染みがない人が多いですが、近年使用されて始めています。
布製チェーンについては、有名なイッセ・スノーチェーンのwebサイトで詳しく紹介されています。
冬用タイヤ規制
冬用タイヤ、またはチェーンを装着しなければ、走行不可になる道路規制です。
主に高速道路、有料道路で行われる規制の一つで、規制が出た場合には、対応しなければその道路を走行できなくなります。
走行中に規制が出た場合には、携帯しているチェーンをサービスエリアで取り付けることで、そのまま走行することができますが、それができない場合には、直ちに最寄りのインターで降りなければなりません。
チェーン規制(大雪)
チェーンを装着しなければ、走行不可になる道路規制です。
大雪特別警報や大雪に対する緊急発表が行われるような異例の降雪時に、特定の道路で規制がかかります。
上述の冬タイヤ規制と同じように、「ノーマルタイヤでもチェーンを装着すれば良い」と考える人がいるかもしれませんが、そうではなく、「スタッドレス・タイヤでも走行できないほどの環境」という意味に捉えて下さい。
チェーン規制では、スタッドレス・タイヤにチェーンを装着しなければなりません。ノーマルタイヤにチェーンでは走行できません。
チェーン規制は冬用タイヤ規制より強い規制で、とんでもない大雪の日に出される規制です。
チェーン規制箇所一覧
直轄国道
都道 府県 | 路線 番号 | 箇所名 | 区間 | 延長 (km) |
---|---|---|---|---|
山形 | 112 | 月山道路 | 西川町月山沢~ 鶴岡市田麦俣 | 15.2 |
山梨 静岡 | 138 | 山中湖・須走 | 山梨県山中湖村平野~ 静岡県小山町須走字御登口 | 8.2 |
新潟 | 7 | 大須戸~上大鳥 | 村上市大須戸~ 村上市上大鳥 | 15.3 |
福井 | 8 | 石川県境~坂井市 | あわら市熊坂~ あわら市笹岡 | 3.2 |
広島 島根 | 54 | 赤名峠 | 広島県三次市布野町横谷~ 島根県飯南町上赤名 | 2.5 |
愛媛 | 56 | 鳥坂峠 | 西予市宇和町~ 大洲市北只 | 7.0 |
高速道路
都道 府県 | 路線 番号 | 箇所名 | 区間 | 延長 (km) |
---|---|---|---|---|
新潟 長野 | E18 | 上信越道 | 信濃町IC~新井PA(上り線) | 24.5 |
山梨 | E20 | 中央道 | 須玉IC~長坂IC | 8.7 |
長野 | E19 | 中央道 | 飯田山本IC~園原IC | 9.6 |
石川 福井 | E8 | 北陸道 | 丸岡IC~加賀IC | 17.8 |
福井 滋賀 | E8 | 北陸道 | 木之本IC~今庄IC | 44.7 |
岡山 鳥取 | E73 | 米子道 | 湯原IC~江府IC | 33.3 |
広島 島根 | E74 | 浜田道 | 大朝IC~ 旭IC | 26.6 |
おすすめのチェーン
最も性能が高く、簡単に取り付けが可能な非金属チェーンとして、こちらが有名で売れ筋です。チェーン選びに悩んだら、とりあえずこれを考えてみてはどうでしょうか。下記で価格などをチェックしてください。
※チェーンには対応するサイズがあります。必ずお車のタイヤサイズを確認して、対応するかどうか確認してください。
おすすめのスタッドレス・タイヤ購入方法
近年は東京・横浜・大阪などの都市に住む人も、チェーンのデメリットを考えて、スタッドレス・タイヤの購入を考える人が多くなっています。そして、スタッドレスタイヤは、ネット通販サイトで購入すると驚くほど安く購入できます。
しかし、ネットでの購入は失敗するリスクやコツがあります。
スタッドレス・タイヤセットの購入を検討する人に向けて、安くて楽にインターネットサイトで購入する方法を、こちらの記事で詳しく紹介しています。お得にスタッドレス・タイヤセットを購入して、安全で、楽しい冬のドライブをしたい人はぜひご覧ください。
>>>おすすめのスタッドレス・ホイールセット購入方法5選/プロの整備士推薦です。
レンタカーという選択肢
旅行などではスタッドレスのレンタカーを
スキーや温泉旅行など、事前に雪道を運転することがわかっている場合は、その時だけレンタカーを借りてみてはどうでしょうか。
たった1日2日のために、高価なスタッドレス・タイヤを購入するより経済的です。
他にも、スタッドレス・タイヤのレンタルサービスなどもあります。詳しくはこの記事に書きました。
タイヤチェーンに関するよくある質問と回答
- タイヤチェーンは、どんな路面で効果がありますか?
-
タイヤチェーンは、雪が積もった路面や、凍結路で効果を発揮します。また、路面凍結による事故リスクも軽減できます。
- タイヤチェーンとスタッドレスタイヤの違いは何ですか?
-
タイヤチェーンは、タイヤにチェーンを巻きつけて滑り止めとするものです。一方、スタッドレスタイヤは、ゴム組成やトレッドパターンがノーマルタイヤと異なり、氷上や雪上などの滑りやすい路面で滑りにくくなっています。
- タイヤチェーンの価格はいくらですか?
-
タイヤチェーンの価格は、タイヤサイズや性能によって異なります。一般的に、1本あたり5,000~25,000円程度です。
- タイヤチェーンの装着は、自分でできますか?
-
タイヤチェーンの装着は、自分で行うことができます。しかし、タイヤチェーンの種類やタイヤサイズによっては、専門的な知識や技術が必要になる場合もあります。不安な場合はディーラーやタイヤショップに依頼することをおすすめします。
- タイヤチェーンのメリットとデメリットは?
-
タイヤチェーンのメリットは、雪が積もった路面や、凍結路で安全に走行できることです。また、路面凍結による事故リスクも軽減できます。一方、デメリットは、乗り心地が悪くなることや、装着に手間がかかること、車の燃費が悪くなることなどです。
まとめ
チェーンとスタッドレス・タイヤは用途が異なるのでチェーンがあればスタッドレスがいらないわけではありません。
チェーンとスタッドレス・タイヤのどちらがいいのかは、その特徴を十分に理解して、あなたの目的と合わせて考える必要があります。しかし、概ねスタッドレス・タイヤのメリットの方がが多いため、悩むのであればスタッドレス・タイヤをおすすめします。
以上、チェーンがあればスタッドレスはいらない!?/本当はどっちがいいのかについてでした。