この記事では整備士資格の実技試験の内容が知りたい人の為に、自動車整備士資格1級2級3級の実技試験の内容や難しさ、合格のカギ・コツなどについて整備士ねっとチームが解説します。
「実技試験を受けようか迷っている」「合格できそうならばチャレンジしたい」と考える人は必見です。
- 整備士の実技試験の出題内容
- 試験合格のコツ
- 試験当日の流れ
出題数と試験時間
出題数と試験時間は次のとおりです。
種目 | 問題数 | 試験時間 |
---|---|---|
1級小型 | 4問 | 40分 |
1級小型以外 | 3問 | 30分 |
4問といっても、記入する場所が4問ではありません。大きいくくりの「問い」が4問です。その中に細かく問題があります。過去問でイメージをつかんでください。
出題内容(公表されていること)
国土交通省のホームページに実技試験の内容について、学科試験の科目としてこのように記載があります。
技能検定の学科試験及び実技試験は、次の表の~~~(中略)~~~「実技試験の科目」の欄に書かれている内容について行われます。(以下、表に書かれている内容)
【一級整備士・特殊整備士】
1. 基本工作
2. 点検、分解、組立て、調整及び完成検査
3. 修理
4. 整備用の試験機、計量器及び工具の取扱い
【二級整備士】
1. 基本工作
2. 点検、分解、組立て、調整及び完成検査
3. 一般的な修理
4. 整備用の試験機、計量器及び工具の取扱い
【三級整備士】
1. 簡単な基本工作
2. 分解、組立て、簡単な点検及び調整
3. 簡単な修理
4. 簡単な整備用の試験機、計量器及び工具の取扱い
国ではこのような公表をしています。内容を確認すると、かなり大雑把であまり参考になりませんが、全体的には次のように書かれていることがわかります。
- 3級は「簡単な整備」
- 2級は「一般的な整備」
- 1級と特殊は「整備」
3級の「簡単な」も、2級の「一般的な」も、かなり抽象的で基準になっていません。1級や特殊にいたっては「整備」としか書いていませんので、「整備の内容なら、どんな内容でも含まれる」ことになります。
一方で、登録試験を行う日本自動車整備振興会連合会のホームページには、実技試験の概要に、次のような記載があります。
試験は、現物での部品、装置及び実車における点検・測定・判定等の記入方式です。
どちらにしても、具体的な出題内容については、過去に出題された問題(過去問)を参考にするしかなさそうです。
頼りになるのは過去問題のみ
実技試験の過去問題は、Webサイトで公開されていて、それぞれダウンロードできます。
- 登録試験>>>日本自動車整備振興会連合会ホームページ 過去の問題と解答
- 検定試験(近年2級シャシのみ)>>>国土交通省ホームページ 過去の試験問題及び解答
また、過去問と一緒に「留意事項」も公開されています。どんな部品が出てきたなどの詳細が写真付きでわかる場合がありますので、受験される場合は必ず確認してください。
今のところ頼りになるのは過去問題と留意事項のみです。
過去問題からわかること
1級、2級、3級とも、教科書に記述のあるところからの出題
教科書の中の「点検・修正」や「点検」または「整備」という項目に記載されているところから出題し、正確に整備できるかどうかを評価しているようです。いずれも配点や、解答などは一切公表されていませんので、謎の多い試験となっています。
例えば、2級ガソリンの実技試験では、一つがエンジンの教科書から、一つはシャシの教科書からなどと、バランスを考えて出題されていますので、「全ての問題がエンジンの問題だった」ということはないようです。その他の種目も同様です。
過去問題をひととおり見れば、それぞれの種目について傾向がわかりますので確認してください。
実技試験合格が難しい4つの理由
- 問題のわかりにくさ
- 不慣れな機器・工具を使用しなければならない
- 訓練・対策が難しい
- 本番の緊張感
実技試験の合格率は、学科試験の合格率に比べて非常に低いです。
実技試験の合格率が低い原因を解説します。
1.問題のわかりにくさ
実技試験の最大の難点は「問題のわかりにくさ」にあるかもしれません。
これは実際に受験するとわかることですが、問題をうまくスムーズに理解できないことが多いのです。特に1級の実技試験では「問題の意味すら全く理解できなかった」と答える受験者もいるようです。
限られた試験時間の中で、問題を理解するのに時間がかかってしまうことが合格を難しくしている一つの原因になっています。
わかりにくさの原因
点検整備の方法と言っても、その部品の構造や自動車メーカーによっても違いがあるため、出題する側からすると、たくさんの注釈を入れなければならず、結果的に問題文や留意事項が長くなってしまい、理解するのに時間がかかってしまう人が多いです。
また、そもそも実技試験の問題はわかりやすく作るのが難しいものです。例えば、言葉で伝えるならば「ここからここまでの配線の状態を点検してください」と説明すれば誰でも簡単に理解できますが、これを文章で伝えるとなると、記号や図などを使って説明しなければいけなくなり、わかりにくくなってしまいます。
これは実技試験の特性上、ある程度は仕方の無い事なのかもしれません。
試しに、過去問を一つダウンロードし、その問題文を読んで、留意事項を見ていただくと、分かりにくさがよくわかります。
2.不慣れな機器・工具を使用しなければならない
実技試験では、スキャンツールやサーキットテスタ、マイクロメータやダイアルゲージなどの測定機器を使用することが多いです。
「普段から自分が使い慣れている測定器であれば10秒で出来ることが、初めて使うものであれば30秒かかってしまう」という事が誰でも当然起きます。または「使い方を勘違いして、正しく測定できなかった」ということもあるかもしれません。
特に1級の実技試験で難しくしているのは「スキャンツール」です。
触ったことがないスキャンツールで作業をしろと言われれば、誰でも普段より時間がかかります。不慣れな機器・工具を使うことが実技試験を難しくしています。
3.訓練・対策が難しい
過去問などを確認し、過去に出題があった問題をやってみようと思っても、なかなか訓練できないことが多いのではないでしょうか。
「まともなシリンダゲージが手元に無い」「測定するシリンダが無い」「スキャンツールが無い」「自動車にうまく設定できない」など、理由はさまざまです。
実技試験の訓練がなかなかできず「本番一発勝負」となってしまう人が多いことも、合格率を下げる原因となっています。
4.本番の緊張感
試験会場は異様なな雰囲気です。
試験会場にはスーツ姿の試験官がたくさんいて、常に監視されているような状況です。試験中も、複数人から近くで動きをジッと見られながら作業を実施していきます。
そのような状況下で普段の力を100%出せる人はそれほど多くは無いはずです。
また、実技試験にチャレンジする人は、後が無い(落ちたらまた学科試験から受験しなければならない)人も多く、緊張から全く実力が発揮できない人もいると思います。
極度の緊張も実技試験を難しくしている原因です。
1級の場合、工具・機器が知らされる
1級小型実技試験においては、試験で使用する車両と、使用するスキャンツールについて事前に公開されます。
これは、「スキャンツールの使い方がわからなくて、問題が解けなかった」「試験車両がいつの時代の何の車両なのかわからなければ、対策できない」などの意見や問題をやわらげるために行っているものです。
やはりそのような試験になってしまうことは、試験を実施する側から見ても本来の実技試験の目的と違うために、対策を講じているようです。
この事前情報は必ず確認してください。
試験車両やスキャンツールのメーカーや種類がわかれば、事前に様々な準備・勉強をすることが可能です。
例として、平成31年(令和元年)の8月に実施される、1級小型実技試験の実際の事前お知らせは次のようになっていました。
平成31年8月25日(日)に実施する平成30年度第2回自動車整備技能登録試験(1級小型自動車実技試験)は、以下の試験用品を使用する予定なのでお知らせします。
1.試験車両
車 名:ホンダ
通称名:フィット
2.外部診断器
日立:HDM-3000
合格のカギ
「思考時間」が実技試験攻略の鍵です。
前述したとおり、実技試験の問題はわかりにくく、理解しにくいものです。
ですが、実技試験の直前に試験問題と留意事項を確認できる10分間の「思考時間」があります。思考時間では、問題を開いて実際に確認する事ができます。
「思考時間で、どれだけ問題を理解し、装置や車のシステムを理解し、不具合の予測をたて、機器・工具の使い方をおさらいできるか」これが実技試験合格のカギを握っています。
試験の流れ
それでは、実際の試験の流れを説明します。
事前に案内された試験日の受付時間に試験会場にいきます。受付時間は受験する種目や人によって異なります。また、受付の先着順で試験が実施されるため、早く受験したい人は早めに受付に行きましょう。
受付後待機室(大部屋)へ案内されます。参考書等の持込可能です。
それぞれ試験時間の15分ほど前に案内されます。
問題用紙と留意事項(紙)が渡され、問題内容と留意事項の確認ができます。この時間で、試験問題の内容、スキャンツールや工具の使い方、部品の構造などを確認し、心の準備をする事ができます。
試験3分程度前に試験室に案内されます。
車や部品、測定工具などを使用しながら、試験を行います。試験中は審査員から審査され、記入式の答案用紙に記入します。また、1級では車の操作等を補助してくれる補助員がいる場合があります。
午前中の試験を実施した人が、試験終了後も一定時間控え室で待たされる場合があります。これは、試験問題がこれから受験する人に漏洩(ろうえい)するのを防ぐためです。午後から受験する人の場合、試験終了した人から順次解散となります。
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最後に
実技試験を受験しようとする場合、あなたのまわりにも実際に試験を受けた経験のある人は少ないはずです。全国を見ても、実技試験に合格して資格を取った整備士は少ないです。
試験の内容を良く知る人も、頼れる人もいなければ、試験に関する情報も少なく、このサイトのようにわずかにあるインターネットの情報程度です。
それでも、一人で情報を収集し、勉強し訓練し実技試験にチャレンジすることはとても意義のあることです。きっとあなたの将来に役立つ経験になると思います。
迷っている方もぜひチャレンジしてみてはどうでしょうか。以上、実技試験の内容や合格のコツでした。