今現在、自動車整備士の実技試験を受験する人はかなり少ない状況になっています。なぜなら資格取得を目指す人のほとんどが、実技試験を免除としているからです。
しかし、それでも実技試験を受けることにはメリットがあるため、受験する事を一度は考える人も少なくありません。
この記事では実技試験の受験を考える人のために、1~3級の全ての種目について、実施状況や合格率を整備士ねっとチームが解説します。これを読めば、「いつどこで受験できるのか」「そもそも実施しているのか」「合格率」についてわかります。
実技試験全体の現在の状況
全ての自動車整備士の資格は、学科試験と実技試験に合格する事で、その知識と技術を認められ、取得できる国家資格です。
学科試験にはおいては、資格取得を目指す全ての人が受験しますが、実技試験においては以前から免除制度があり、今現在も、実技試験を受験せずに、その免除制度を利用して資格取得を目指す人が圧倒的に多い状況になっています。
そのため、実技試験の会場や回数が少なく、限定して実施されています。

実技試験の実施状況と合格率

近年、実技試験の実施実績がある種目について、状況と合格率を紹介します。データ元は一般社団法人日本自動車整備振興会連合会HP、及び国土交通省HPです。
【3級ガソリン】
実施年月 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
30年1月 | 210 | 108 | 51.4 % |
28年1月 | 164 | 148 | 90.2 % |
26年1月 | 154 | 68 | 44.2 % |
平均 | 176 | 108 | 61.4 % |
- 2年に一度、1月に実施(申込は8月)
- 合格率は学科試験同等の61.4%
- 実技試験の中では、1級と並んで受験者が最も多い
3級ガソリンの実技試験のチャンスは1回のみ
3級ガソリンの実技試験のチャンスは、学科試験合格の直後に実施される実技試験の1回のみとなります。
実技試験は、学科試験に合格して2年以内の者でなければ受験する事ができません。
しかし、学科試験後の2年間の間に、実技試験は1回しかないため、事実上、チャンスは1回のみとなります。
合格直後の実技試験に不合格になってしまうと、次に行われる実技試験の時には学科試験合格の効力が切れてしまうため、再び学科試験に合格する必要があります。
また、後述する「3級シャシ」「2級ガソリン」「2級シャシ」においても、2年に一度しか実施されていないので、全く同じことが言えます。
【3級シャシ】
実施年月 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
31年1月 | ー | ー | ー |
29年1月 | 55人 | 33人 | 60.0 % |
27年1月 | 56人 | 30人 | 53.6 % |
25年1月 | 35人 | 28人 | 80.0 % |
平均 | 49人 | 30人 | 62.3 % |
- 2年に一度、1月に実施(申込は8月)
- 合格率は学科試験同等の62.3%
- 受験者が全国でも少なく、そのため受験地がかなり限定される(福岡・大阪・愛知・東京でしか受験できなくなる等)
【2級ガソリン】
実施年月 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
31年1月 | ー | ー | ー |
29年1月 | 51人 | 22人 | 43.1 % |
27年1月 | 29人 | 10人 | 34.5 % |
25年1月 | 48人 | 21人 | 43.8 % |
平均 | 43人 | 18人 | 41.4 % |
- 2年に一度、1月に実施(申込は8月)
- 合格率は学科試験よりも低い41.4%で、難関試験
- 受験者が全国でも少なく、そのため受験地がかなり限定される(福岡・大阪・愛知・東京でしか受験できなくなる等)
他の実技試験も同じですが、受験の申請期間が実技試験日の5ヶ月も前になっていため、注意が必要です。
【2級ジーゼル】
実施年月 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
30年1月 | 12人 | 3人 | 25.0 % |
28年1月 | 13人 | 4人 | 30.8 % |
26年1月 | 10人 | 0人 | 0.0 % |
平均 | 12人 | 2人 | 23.3 % |
- 2年に一度、1月に実施(申込は8月)
- 合格率は学科試験よりも低い23.3%で、難関試験。
- 受験者が全国でも非常に少なく、そのため受験地がかなり限定される(大阪・愛知・東京でしか受験できなくなる等)
【2級シャシ(検定試験)】
実施年月 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
30年9月 | 1人 | 1人 | 100.0 % |
29年9月 | 2人 | 0人 | 0.0 % |
28年9月 | 3人 | 1人 | 33.3 % |
27年9月 | 2人 | 0人 | 0.0 % |
26年9月 | 3人 | 0人 | 0.0 % |
平均 | 2人 | 0人 | 18.2 % |
- 1年に一度、1月に実施(申請期間は5月)
- 受験者が極端に少ないので、合格率は参考程度ですが難関試験と思われる
- 受験者が全国でも極端に少ないので、そのため受験地が「東京のみ」の実績となっている
- 現在唯一の検定試験
【1級小型】
実施年月 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
30年8月 | 158人 | 81人 | 51.3 % |
29年8月 | 170人 | 39人 | 22.9 % |
28年8月 | 192人 | 52人 | 27.1 % |
27年8月 | 286人 | 271人 | 94.8 % |
26年8月 | 362人 | 106人 | 29.3 % |
25年8月 | 400人 | 324人 | 81.0 % |
平均 | 261人 | 146人 | 55.7 % |
- 1年に一度、8月に実施(申請期間は1月)
- 合格率平均は55.7%ですが、その年によってかなりふらつきがある(安定しない)
- 実技試験の中では、3級ガソリンと並んで受験者が最も多い
一級の実技試験のチャンスは2回
1級小型の実技試験は、毎年実施しているので、学科試験合格の効力がある2年間のうちに2回のチャンスがあることになります。
また、1級小型の実務試験を免除にするためには、専門学校等で2年間就学するか、整備振興会で1年程度の講習を受けるかとなっておりハードルが高いため、実技試験の受験者が比較的多い種目となっています。
実技試験の試験会場について

今現在、実技試験は全国の大きな都市でのみ実施されています。大きな都市とは次の10都市です。
沖縄、福岡、広島、香川、大阪、愛知、新潟、東京、宮城、札幌
しかし、その種目ごとに、各ブロック(九州・関東など)の受験希望者の人数によって、試験実施会場が変更になる場合があります。
具体的には、東北・四国などの各ブロックに受験者が少ない場合は、大阪・東京などの更に大きな都市で合同開催に変更されます。特に宮城、香川、沖縄については、実際には実施されないケースが多く、希望者はその他の都市にいって受験しなければならない場合が出てきます。
人によっては、かなり遠いところに、泊りがけで行って受験しなければならない場合がでてきます。
試験会場はギリギリまでわからない
受験者数が決定した後に実施会場が決定されるため、例えば、「高知の人が香川で受験したいと思って申請したが、四国ブロックの受験者が少ないため、会場が大阪に変更になってしまい、費用や日程の関係で受験できない」などとなってしまう事があります。
そして、キャンセルしたい場合も、申請の時に収める受験手数料が戻ってこないようです。
受験地が決定するまではわからないのですが、自動車整備振興会で申請する際に「香川での実施はありそうですか?」と聞いてみると、なにか答えてくれるかもしれません。
まとめ
- 近年、実施している種目と実施していない種目がある
- 申請受付期間が試験日の5ヶ月も前なので注意が必要
- 受験申請した後に試験会場が決定されるので注意が必要
- 実施している種目でも、2年に一度しか実施していない種目が多い
- 2年に一度しか実施していない種目は、不合格になると、学科試験からやりなおし(一度しかチャンスが無い)
- 2級ガソリン、2級ジーゼル、2級シャシが最難関
- 1級小型の合格率が安定しない(当たり年と外れ年がある!?)
以上、自動車整備士、実技試験の実施状況や合格率でした。