エンジンがかからない場合の原因で、真っ先に思い浮かぶのはバッテリー上がりだと思います。実際に、車のエンジンが始動しない不具合で最も多い原因はバッテリートラブルです。
しかし、エンジンがかからなくても、車の電気やライトが付く場合は、バッテリー上がりでは無い可能性もあり、多くの人が悩みます。
この記事では、電気やライトはつくのにエンジンがかからない原因や解決法を解説し、すぐに解決できる可能性のある確認事項や、エンジンがかからない4つの原因について一級整備士の管理人がが解説します。
記事を読んで、一人でも多くの人が救われることを願います。
この記事を書いた人:きりん
元ディーラーの一級整備士で整備士ねっと管理人です。自動車整備業界に長く携わり、現在は整備業界のコンサルなども行っています。twitterでたくさんの整備士さんや業界の人と繋がっているのでチェックしていただけるとうれしいです。(seibisi_net)
事前確認
「セルモーターが全く回らない(スタートボタンを押した時に「ギュルギュル音」がない)」場合は、まず最初に、先入観にとらわれず、冷静になって下記二つの事をあらためて確認してください。
整備士としての私の経験上、実際によくある事例です。
- シフトレバーがPレンジに入っているか
- ブレーキを強く踏んでスタートボタンを押しているか
私の経験上、シフトレバーがPレンジに入っていないケースで、「メーターの電気やライトが付くけどエンジンがかからない」と訴える人が数多くいました。
エンジンが完全に掛かる前にシフトレバーを動かしてしまった場合や、エンストした場合はシフトレバーがDレンジに入っていることが多いです。
車はP(N)レンジでのみエンジンが始動できるように作られているため、Dレンジではエンジン始動ができません。シフトレバーがPに入っているかをもう一度確認し、Dなど他のレンジに入っている場合は、Pレンジに戻すことでエンジンがかかる場合があります。Pレンジが無い輸入車やバイクの場合はNレンジで始動します。
また、AT(オートマ)の車の場合は確実にブレーキペダルを踏んでスタートボタンを押すこと、MT(マニュアル)の車の場合は確実にクラッチを踏んで鍵を回すことを確かめてください。
こちらも、普段乗り慣れない家族の車を移動させる場合などに、よくある事例で、同様の症状になります。
誰でも簡単に確認できますので、ムダな手間や費用を抑えるために確認してください。
電気やライトはつくけど、エンジンがかからない3つの原因と解決法
- バッテリーあがり
- 鍵・セキュリティ関係の不具合
- エンジン本体、システムや部品の不具合
原因は大きく分けて3つありますが、一般的に可能性が高いのは「1.バッテリーあがり」です。
費用を抑えたいなら、1.2.を自分で確認して、それでも解決しなければ、整備工場に修理依頼するというのが最善の方法かもしれません。
原因1:バッテリーあがり
バッテリーあがりとは
車で使用するための電力を蓄えておく「バッテリー」の容量が低下し、電力不足でエンジンが始動できない状態を言います。電源が入らなくなったスマートフォンと同じように、車が機能しなくなります。
バッテリー上がりの症状
次のような症状が出ている場合はバッテリー上がりの可能性が高いです。
- セルモーターが回らない(ギュルギュル音がしない)
- セルモーター(スタータ)の音がいつもと違う(ギュルギュル音が小さい)
- かかりそうでかからない
- ヘッドライトやハザードが点灯しない・暗い
- キーレスやドアボタン操作で鍵が開かない
- ヘッドランプ、ルームランプもつかない
- いつもと違うことが多い(変な音、カチャカチャ音など)
バッテリーが上がると「メーターなどの電気も点かなくなって、セルモーターも回らないのでは」と思う方も多いですが、バッテリー容量の低下具合(程度)によっては、電気やライトは正常に点灯したり、セルモーターが回ることもあります。
特にハイブリッド車においては、普段経験の無いような変な音がしたり、意味不明な複雑な症状になることがあり、プロの整備士でもバッテリーあがりだとすぐにはわからない事があります。
バッテリーあがりの場合は車によっていろんな症状となりますが、上記のようなわかりやすい症状がある場合は真っ先に疑ってください。
特にスタートボタンを押したときの、セルモーターの「音が小さい・音がしない・元気がない・間延びする・カラカラ音」など、音が違うときには、バッテリーに原因がある可能性が高くなります。
一方で、ライトの消し忘れなどをしてしまい、バッテリーの容量が完全に無くなっている場合は、セルが全く回らなくなり、ヘッドライトやルームランプなどの電気類も一切点灯しなくなります。
バッテリーあがりの症状については、整備士でなくとも経験がある人であれば、容易に判断できることが多いので、近くにベテランドライバーなどがいたら確認してみましょうい。ちなみに、私が整備士の頃は、携帯電話で音を聞かせてもらい、異常車のセルの音で判断することがありました。
いずれにしても、電気やライトはつくのにエンジンがかからない原因として最も多いのがバッテリーあがりによるものです。
「ライトや電気はつくからバッテリー上がりではない」は間違い
ライトや室内灯などがついていれば、バッテリー上がりではないと思う人が多いと思いますが、決してそのようなことはありません。
確かに完全にバッテリーが上がってしまえば、ヘッドライトなどの電気系統がつかなくなりますが、そのようなケースはかなりまれで、エンジンがかからなくなる多くの場合で、ヘッドライトはつきます。
バッテリー上がり3つの解決法
- ジャンプスタート(一時的な救援始動)
- バッテリー充電
- バッテリー交換
1.ジャンプスタート
バッテリーが上がってしまった車と、正常な車のバッテリーをブースターケーブルで繋いでエンジンを始動させる方法
ジャンプスタートは一時的にエンジンを始動して走行できるようになりますが、エンジンを止めてしまえばまたかからなくなってしまう可能性が高いので、応急措置だと考える必要があります。
急ぎの場合や、とりあえず車をこの場所から動かしたい場合などは、整備工場、JAF、スタンド、レッカー屋さんなどにジャンプスタートしてもらうのが有効です。
また、プロでなくともジャンプスタートができる人や、常にブースターケーブルを車に積んでいる人もいますので、特に大人の男性が近くにいれば声をかけてみてもいいかもしれません。大規模駐車場、大型店舗、パチンコ店などでは、管理人さんが助けてくれる場合もあります。
但し、ハイブリッド車の場合は、思わぬ故障につながる場合があるのでプロに任せるのが無難です。
なお、ジャンプスタートを業者に依頼した場合の料金は、車種や場所によって2000~5000円程度になります。
2.バッテリー充電
整備工場にある充電器を使って、装着されているバッテリーを充電・復活させる方法
充電時間は3時間から1日程度必要で、3000~5000円程度の料金です。
ただし、バッテリーを充電しても新品のバッテリーの容量に戻るわけではなく、再発する可能性や、ネット通販の普及などにより新品のバッテリー価格が安くなっている事から、現在では、バッテリーを新品に交換する方法が主流です。
個人的にも、バッテリーは充電ではなく、新品に交換することをおすすめします。
バッテリーの充電についてはこちらの記事に書きました。
>>>自動車のバッテリーは充電で復活するか!【健全性(SOH)がポイント】
3.バッテリー交換
バッテリーを新品のバッテリーに交換する方法
バッテリーが上がってしまった場合の対応として、もっとも確実な対応と言えます。
整備工場、スタンド、カーショップで取り替えてもらう方法以外にも、ネット通販で購入して自分で交換する方法があります。
中でも、ネットでバッテリーを購入して自分で交換する方法が最も費用がかからない方法です。車によりますが、経験がない人でもバッテリーの交換作業はそれほどハードルは高くありません。
バッテリー交換についてはこちらの記事を参考にしてください。
原因2:鍵・セキュリティ関係の不具合
鍵・セキュリティ関係の不具合とは
- 鍵が無い・違う
- 鍵の電池が弱い・切れている
- 鍵が水没などで壊れているリスト
主に、上記のような鍵の不具合が原因で、エンジンがかからなくなってしまう不具合です。
特徴は、スタートボタンを押しても、車側に反応が無くなり、メーターなどの表示も全く作動しなくなることです。
鍵の不具合の場合の症状
- セルモーターが回らない(スタート時にギュルギュル音がしない)
- スタートボタンを押しても無反応でメーターが光るなどの変化がない
- 鍵のインジケータ(小さなランプ)が光っていない・点滅している
- スタートボタンのインジケータ(小さなランプ)が光っていない・点滅している
スマートキーと呼ばれるような、鍵を差し込まなくても持っているだけでエンジンが掛かる車の場合、鍵の問題による始動不良は非常に多く、寒い日の朝などによく起こります。この症状は、鍵の中の電池の容量が低下している場合によく起きます。
メーター内に表示される、鍵やセキュリティの警告灯が点灯・点滅している場合には、鍵に問題がある可能性が高いです。特にヘッドライトなどの電気は付くけどセルが回らない場合は確認しましょう。
一方、次のような場合は鍵の問題ではありません。他の問題があります。
- スタートボタンを押した時にメーター内のいろんなマークが点灯する
- セルモーター(スタータ)がわずかでも回っている
鍵の不具合の場合の3つの解決法
- スペアキーを使用してみる
- 電池がない場合の始動方法を確認して実施する
- 鍵の中の電池を交換してみる
1.スペアキーを使用してみる
鍵に問題がある場合は、スペアキーを使用することで、エンジンがかかるようになります。
2.電池が無い場合の始動方法を確認して実施する
鍵で直接スタートボタンを押す
現在の車は、鍵の中の電池の容量が無くなってしまった場合でも、「ある方法」でエンジンが始動できるようにできています。
「ある方法」とは、車の取扱説明書に記載されていますが、多くの日本車は、鍵でプッシュ・スタートボタンを直接押す方法です。
以下の方法を、冷静に実施してみてください。
- 右手(左手)に鍵を持ち、
- ブレーキを踏んで、
- 鍵の先端で直接スタートボタンを押します。(爪楊枝でエレベータのボタンを押すようなイメージ)リスト
この方法は、鍵に内蔵されているボタン電池が切れていても、水没して中の基盤が壊れている場合でも始動できる可能性が高い方法です。
方法がイメージできない人は取扱説明書を確認してください。
鍵でスタートボタンを押すことで、エンジンが始動した場合は、鍵の中の電池を交換することで不具合が解消します。
3.鍵の中の電池を交換してみる
鍵の中の電池の容量が不足している場合は、電池を交換することで不具合が解消します。
但し、交換する前に「2. 電池が無い場合の始動方法を確認して実施する」を実施して、電池が原因であるか確かめることをおすすめします。
鍵の中に入っている電池は、おもちゃなどでよく使われる「ボタン電池」で、コンビニでも手に入る電池であることが多いです。
ボタン電池は車種や使用環境によりますが、1~3年程度で容量が無くなります。
鍵の電池の交換方法
- 鍵の中に鍵が挿入されている場合はその鍵を抜く
- 爪やマイナスドライバーやコインなどを使って、鍵のケースを二つに割る(分解する)
- 中のボタン電池を取り出し、品番(記号)を確認する(CR1616、CR2032など)
- 同じ品番(記号)のボタン電池を購入し、挿入する
- ケースをもとに戻す
比較的簡単で、誰でも出来ます。苦労するとすれば、「2.マイナスドライバーやコインなどを使って、鍵のケースを二つに割る(分解する)」 ところで、「固くて壊れそうで割れない(分解できない)」という感じになるかもしれませんが、器用な人なら必ずできるので、鍵をよく見ながら実施してください。
原因3.エンジン本体、システムや部品の不具合
エンジン本体、システムや部品の不具合とは、電気やライトはつくけど、エンジンがかからない原因で、バッテリーや鍵が原因ではない場合は、エンジン本体や、エンジンシステム、バッテリー以外の部品の不具合によるものです。
この場合は、プロに診断してもらわなければ、直すことは難しいので迷わず整備工場に連絡しましょう。
症状は様々で、原因の例として次のような原因があります。
- セルモーター(スタータ)の不良
- エンジンコンピューターの不良
- フューエルポンプの不良
- リレーやヒューズなど電子部品の不良
- スタートスイッチ、鍵の不良
- スパークプラグ・IGコイルの不良
- エンジン内部の機械的な故障
エンジンがかからない原因は多種多様で、それぞれ修理費用が異なります。経験のない人が判断するのは難しく、バッテリーあがりでない場合は、整備工場に依頼しましょう。
この場合は、プロに診断してもらわなければ、直すことは難しので迷わず整備工場に連絡しましょう。
どこの整備工場に修理依頼する?
- 新しい車の場合は購入したディーラーがいい
- 車検や修理してすぐの場合は、車検したところがいい
- ディーラーより民間整備工場の料金が安い
- ディーラーは信頼性があり早期修理可能
どこの整備工場に出すかはとても重要です。このように、時と場合によってもどこに出すのがよいかが変わります。
詳しくはこちらの記事に書きましたので参考にしてください。
>>>車の修理・車検はどこに出すのがいいのか【ディーラー以外の整備工場メリット・デメリット】
まとめ
電気やライトはつくのにエンジンがかからない原因は、大きく分けて3つです。
- バッテリーあがり
- 鍵・セキュリティ関係の不具合
- エンジン本体、システムや部品の不具合
1.2.を自分で確認して、それでも解決しなければ、整備工場に修理依頼するというのが最善の方法かもしれません。
以上、 電気やライトはつくのにエンジンがかからない3つの原因・解決法でした。